人間は1万5000年前からイヌを家畜化し、私たちの「友」となるように、そして人間の感情を読み取ることができるように改良し続けてきた。(参考記事:「イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より」)
最新の研究により、人に飼われたことのない野良犬でも、私たちのジェスチャーを理解できるということがわかった。成果は1月17日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に発表された。(参考記事:「犬は雑音の中でも自分の名前を聞き取れる、新研究」)
世界には多く見積もって3億匹の野良犬がおり、そのうち約3000万匹がインドにいると推定される。野良犬は人間に危害を及ぼすことも多い。世界保健機関(WHO)によれば、インドでは子どもを中心に毎年約2万人が狂犬病で命を落としており、野良犬は公衆衛生上のリスクになっている。(参考記事:「アライグマに潜む狂犬病、米国の壮大な根絶計画」)
これが野良犬の管理に関する世論を二極化させており、一部の人々が非人道的な方法で野良犬を殺すことにもつながっていると、インド科学教育研究大学コルカタ校の動物行動学者アニンディータ・バードラ氏は話す。そのため、人間がなでて餌をくれようとしているのか、それとも傷つけようとしているのか、野良犬はいつも疑心暗鬼になるほかないという。
だからこそ、野良犬の行動をもっとよく知ることが、人間と彼らの間にある問題を解決するために欠かせない。野良犬の研究を10年間続けてきたバードラ氏はそう説明する。(参考記事:「犬にも感情がある、MRIで確認」)
氏が最近行った実験で明らかになったのは、多くの野良犬は、人間が物を指差しているとき、どこを見ればいいのかをわかっているということだ。これは、訓練をしなくても人間の意図を読みとる能力が、犬に先天的に備わっていることを示唆している。(参考記事:「犬は飼い主の言葉を理解している、脳研究で判明」)
食べ物を野良犬に分け与えようとして噛まれ、狂犬病に感染してしまう子どもたちも多い。この研究結果は、大人たちのみならず、そういった子どもたちにも、野良犬との「もっと平和な共存」のしかたを教育することに役立つかもしれないとバードラ氏は話す。(参考記事:「飼い主のストレスは愛犬にうつる、研究」)
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