約3300年前の晩さん会。頭に円すい形の物体を載せた女性たちが描かれている。この円すいは古代エジプト美術によく登場するが、単なるシンボルか、実際に使われていたものかという議論を呼んできた。(PHOTOGRAPH BY WERNER FORMAN, UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY)
[画像をタップでギャラリー表示]

 古代エジプト美術には、頭に円すい形の「何か」を載せた人々が登場する。パピルスの巻物やひつぎに描かれた王族の晩さん会や神聖な儀式には、頭に円すいを載せた男女が集まっている。特定の神々と結び付くとされた、出産の風景を描いた作品に描かれることもある。

 古代エジプトでは1000年以上にわたり、この円すいが広く描かれ続けたが、実在したかどうかは不明で、その意味も解明されていなかった。この謎めいた物体が発掘されたことはなく、一部の学者は単なる象徴にすぎないと考えるようになった。キリスト教美術の聖人や天使の図像に描かれた光背のようなものだ。

 12月10日付けで学術誌「Antiquity」で発表された最新の論文によれば、ある国際的な考古学チームがついにこの円すいを発見した。

 円すいが発掘されたのは、古代エジプトの都市アマルナの共同墓地。ツタンカーメンの父とされるアクエンアテンが建てた寺院のある場所だ。(参考記事:「エジプト初の革命家 アクエンアテン」

古代エジプトの都市アマルナの共同墓地。頭に円すい形の物体を載せた遺骨が2体発見された。(PHOTOGRAPH BY THE AMARNA PROJECT, ANTIQUITY PUBLICATIONS LTD)
[画像をタップでギャラリー表示]

 アマルナは紀元前14世紀に急いで建設され、わずか15年ほどで放棄された。当時の人口は約3万人。豪華な墓地に埋葬された上流階級層は10%程度で、残りの一般市民は質素な墓地に埋葬された。一般市民の墓地で価値あるものが見つかることは少ないが、2009年、アマルナ・プロジェクトのメンバーたちが謎の円すいの遺物を発見した。アマルナ・プロジェクトは英ケンブリッジ大学が主導するプロジェクトで、ナショナル ジオグラフィック協会も資金援助を行っている。(参考記事:「古代エジプト、人骨が語る過酷な暮らし」

 すでに発掘調査から10年たっているが、オーストラリア、モナシュ大学の考古学者アナ・スティーブンス氏は、円すいを発見した日のことをはっきり覚えている。そのとき、「これはたぶん円すいよ!」とプロジェクトメンバーのメアリー・シェパーソン氏が叫んだ。スティーブンス氏が駆け寄ると、女性の頭蓋骨の上にそれがあった。スティーブンス氏はアマルナ・プロジェクトのアシスタントディレクターで、現在、共同墓地の調査の指揮を執っている。

「私たちがそれまでほかの墓地で見てきたものとは全く違いました」とスティーブンス氏は振り返る。しかし、それは古代エジプト美術でよく目にする奇妙な円すいにそっくりだった。その後、性別不明の大人の墓地からも、別の円すいが発見された。

次ページ:発掘された円すいの写真も

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    記事が全て読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

魅惑の財宝伝説

失われた黄金と宝石の謎

きらめく宝石、燦然と輝く黄金――。太古の昔から人々を魅了してやまない財宝の数々。現代に語り継がれる財宝とそれを追い求める人々の物語を、美しい写真を交えて紹介します。

定価:本体1,400円+税