「特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇」の1回目。100頭以上のライオンのネグレクトが調査で発覚し、あるライオン牧場が摘発された。牧場のその後と、南アフリカのライオン飼育産業に潜む問題を追う。
南アフリカ共和国には、250を超える民間のライオン牧場がある。そのうちのひとつ、北西州にある「ピエニカ・ファーム」へ、2019年4月11日、同国の動物虐待防止協会(NSPCA)による立ち入り調査が入った。
そこで調査官が目にしたのは、泥だらけの狭い囲いに入れられたライオンたちだった。本来なら3頭分のスペースに34頭が詰め込まれ、周囲には腐敗したニワトリの死骸やウシの体の一部が散乱していた。隅の方には排せつ物の山が築かれ、飲み水のボウルには青ゴケが生えていた。(参考記事:「米国で飼育されるトラ、その痛ましい現状とは」)
27頭のライオンが、寄生ダニによるひどい皮膚病に冒され、全身の毛がほとんど抜け落ちていた。ピエニカ・ファームはライオンを繁殖させている牧場だ。3頭の子ライオンが泥の中にうずくまり、体を震わせながら前へ進もうと地面を這っていた。もう1頭は、じっとしたままぼんやりと空を見つめていた。
「胸が張り裂けそうでした」と調査責任者のダグラス・ウォルター氏は語った。「子どものころから、ライオンといえばジャングルの王様というイメージしかありませんでした。それが、威厳も気品もすべてはぎとられて、あのようなひどい扱われ方をするなんて」
ピエニカ・ファームは4頭の子ライオンのうち2頭の引き渡しに応じた。3頭目は安楽死させられたが、4頭目は皮膚病にかかっているおとなのライオンたちとともに牧場に残された。1962年に南アフリカで制定された動物保護法の執行機関であるNSPCAは、その後、牧場主であるジャン・スタインマン氏と従業員を、同法第71条違反で訴えた。南アフリカの法に基づいて警察が捜査を行い、現在、検察がこれを審理している。
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