「特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇」の1回目。100頭以上のライオンのネグレクトが調査で発覚し、あるライオン牧場が摘発された。牧場のその後と、南アフリカのライオン飼育産業に潜む問題を追う。

7月に撮影されたピエニカ・ファームのライオンたち。4月に立ち入り調査が入った時には、寄生ダニが原因の皮膚病にかかっていた。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 南アフリカ共和国には、250を超える民間のライオン牧場がある。そのうちのひとつ、北西州にある「ピエニカ・ファーム」へ、2019年4月11日、同国の動物虐待防止協会(NSPCA)による立ち入り調査が入った。

 そこで調査官が目にしたのは、泥だらけの狭い囲いに入れられたライオンたちだった。本来なら3頭分のスペースに34頭が詰め込まれ、周囲には腐敗したニワトリの死骸やウシの体の一部が散乱していた。隅の方には排せつ物の山が築かれ、飲み水のボウルには青ゴケが生えていた。(参考記事:「米国で飼育されるトラ、その痛ましい現状とは」

 27頭のライオンが、寄生ダニによるひどい皮膚病に冒され、全身の毛がほとんど抜け落ちていた。ピエニカ・ファームはライオンを繁殖させている牧場だ。3頭の子ライオンが泥の中にうずくまり、体を震わせながら前へ進もうと地面を這っていた。もう1頭は、じっとしたままぼんやりと空を見つめていた。

「胸が張り裂けそうでした」と調査責任者のダグラス・ウォルター氏は語った。「子どものころから、ライオンといえばジャングルの王様というイメージしかありませんでした。それが、威厳も気品もすべてはぎとられて、あのようなひどい扱われ方をするなんて」

4月の調査でNSPCAが撮影した子ライオンたちの痛々しい映像。

 ピエニカ・ファームは4頭の子ライオンのうち2頭の引き渡しに応じた。3頭目は安楽死させられたが、4頭目は皮膚病にかかっているおとなのライオンたちとともに牧場に残された。1962年に南アフリカで制定された動物保護法の執行機関であるNSPCAは、その後、牧場主であるジャン・スタインマン氏と従業員を、同法第71条違反で訴えた。南アフリカの法に基づいて警察が捜査を行い、現在、検察がこれを審理している。

次ページ:「背筋が寒くなるような産業です」

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 動物の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようという壮大な挑戦!

定価:本体3,600円+税

おすすめ関連書籍

2019年12月号

エルサレム 地下の迷宮へ/プラスチック依存/米国のトラたちの悲鳴/アフリカの自然公園/ヒマラヤ 危険な氷河湖

2019年を締めくくるカバーストーリーは「エルサレム 地下の迷宮へ」。複雑な歴史を持つエルサレム。この地下に眠る貴重な遺跡を巡り、論争が起きています。そのほか、米国で飼育されるトラの実態に迫る「米国のトラたちの悲鳴」、地球温暖化で急速に解けだした「ヒマラヤ 危険な氷河湖」など、特集5本を掲載!

定価:本体1,028円+税