オーストラリア、クイーンズランド州で撮影したコアラ。有袋類のコアラは、オーストラリアの東海岸沿いに広く生息している。現在、森林火災が猛威を振るっている場所だ。(PHOTOGRAPH BY SUZY ESZTERHAS, MINDEN PICTURES)
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 山火事の季節を迎えたばかりのオーストラリアで、前例のない壊滅的な火災が起きている。シドニーからバイロン・ベイにかけての東海岸では、数十カ所で森林火災が起きており、家や森、そして湿地帯までが燃えている。そんな中、火事の犠牲者のシンボルとして、火傷をして死にかけているコアラの姿が報道されている。(参考記事:「未曽有のアマゾン森林火災、動物への影響は」

猛威を振るった森林火災で火傷を負ったメスのコアラ。オーストラリア、ポートマッコーリーのコアラ病院に救出されて治療を受け、アンウェンと名付けられた。(PHOTOGRAPH BY NATHAN EDWARDS)
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「彼らは、かわいらしく無力な生きものです」と、オーストラリア、クイーンズランド大学の研究員であるクリスティーン・アダムス=ホスキング氏は言う。「鳥は飛べて、カンガルーはすばやく飛び跳ねることができますが、足の遅いコアラはその場で立ち往生するしかありません」(参考記事:「動物大図鑑 コアラ」

 無防備なコアラたちの苦境が伝えられると、心配の声が多く上がった。と同時に、混乱が起きた。コアラが生息地の8割を失い、「機能的絶滅」に陥ったという誤った情報が、マスコミやソーシャルメディアで広まったためだ。これは、危機のさなかにどれほど早くデマが広がるかを示す好例でもある。

 コアラは現在、国際自然保護連合(IUCN)の危機リストでは、絶滅危惧種(endangered)の一歩手前である危急種(vulnerable)に分類されている。報告によると、火事で大きな被害を受けたニューサウスウェールズ州北部では、これまでに350頭から1000頭のコアラが死んだという。(参考記事:「あの動物も、危機に瀕しています」

 しかし、専門家は絶滅に向かっているわけではないという。タスマニア大学の教授で、野生生物保護を専門とするクリス・ジョンソン氏は、「コアラがそんなに速く絶滅することはありません」と話す。「複雑にからみ合ったたくさんの理由により、コアラの数は減り続けるでしょう。しかし、1つの出来事で種が絶滅してしまうような状況にはなっていません」

 専門家に聞いた正確な状況を説明しよう。

【参考動画】コアラ入門
コアラはクマの仲間ではなく、有袋類だ。向かい合わせに付いている6本の「指」、下向きになった袋、木の枝でほぼ一日中寝ていられるなど、数々の独特な特徴がある。(解説は英語です)

次ページ:被害はなぜ深刻に? 生き残ったコアラの数は?

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