化石燃料生産量、2030年にパリ協定目標値の220%

新指標「化石燃料生産量ギャップ」を発表、鍵は各国の莫大な補助金、国連ほか

2019.11.26
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米国と中国を含むすべての主要な化石燃料生産国は、今後10年間で石油、天然ガス、石炭の大幅な増産を計画している。パリ協定で定めた削減目標を達成できなくなるも同然だ。写真は中国の油田。(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 各国政府は2015年のパリ協定で、地球の平均気温の上昇を、産業革命以前と比べて1.5℃未満に抑えるという目標に合意した。にもかかわらず、米国、中国、ロシア、サウジアラビア、インド、カナダ、オーストラリアなど主な化石燃料産出国は、軒並み今よりも増産する計画を持っている。この計画のままなら、2030年の化石燃料の生産量は、パリ協定の目標を実現できる値の220%になることが、世界の主要な研究機関と国連による『生産量ギャップ報告書』によって明らかになった。報告書は11月20日に発表された。

 化石燃料の使用による炭素排出量は、2018年に過去最高の371億トンに達した。報告書の筆頭著者であるストックホルム環境研究所米国センターの所長マイケル・ラザルス氏は、化石燃料の生産量を減らさないかぎり、炭素排出量を大幅に減らすことは不可能だと指摘する。(参考記事:「パリ協定の目標を達成できる国はわずか、報告書」

 報告書では、各国政府が公開している文書をもとに分析が行われた。その結果、各国が2030年に計画する石炭、石油、天然ガスの生産量が、地球温暖化を1.5℃未満にとどめるための上限値の220%になると判明した。石炭については380%にもなる。そうなると、世界の気温は4℃以上の上昇に向かうとラザルス氏は言う。

「この報告書は、パリ協定の目標と、各国の石炭、石油、天然ガスの生産計画や政策が、いかに大きく食い違っているかを初めて示しました」とラザルス氏は語る。「気候変動対策のリーダーを自任するカナダやノルウェーのような国々でさえ、化石燃料の輸出量を最大限増やしたがっているのです」

 地球の気温が上昇すれば、氷床の融解ペースが速まり、海面が上昇する。台風やハリケーンの被害も増える。動物は新しい生息地に移動を強いられる。人間の感染症のリスクも高まる。しかも、これらは温暖化による影響の一部にすぎない。(参考記事:「ハリケーンや台風 温暖化でますます強力に?」

次ページ:世界全体で年間約55兆円もの補助金が

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