バハマにあるブルーホール。こうしたブルーホールには、古代の堆積物が良好な状態で残されており、過去にこの場所を通った嵐の痕跡を留めている。(PHOTOGRAPH BY JAD DAVENPORT, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 北大西洋に浮かぶバハマ諸島のサウスアンドロス島。美しい砂浜をもつ、この天国のような島の周辺に、地質学的に貴重な「お宝」、ブルーホールがある。ブルーホールとは海底に口を開けた陥没穴のこと。その奥には古代の堆積物が眠っており、ひいては古代にここを通過した巨大なハリケーンの痕跡も残されている。

 現在、サウスアンドロス島は、メキシコ湾や北米の東海岸に向かうハリケーンの通り道としても知られている。ブルーホールの堆積層を調べることで、現在の大西洋で発生するハリケーンと、過去のハリケーンを比較することが可能となるのだ。

 研究者たちはさまざまに工夫をしてブルーホール内の海底を掘削し、複数のコアサンプル(パイプを使って柱状採取した地質試料)を採取することに成功した。2019年10月に学術誌「Paleoceanography and Paleoclimatology」に発表された研究によれば、全長約18メートルの連続コアサンプルの分析では、一番古いもので1500年前のハリケーンの痕跡が残っていたという。(参考記事:「小惑星衝突「恐竜絶滅の日」に何が起きたのか」

ハリケーンの幹線道路

 コアサンプルの分析ではまた、ハリケーンが活発な時代と、それほどでもない時代があったことがわかっているが、基本的にサウスアンドロス島は1500年にわたってハリケーンが頻繁に通る幹線道路のような場所だったことを確認できた。過去150年に限ると、この島は数十のハリケーンに見舞われているが、巨大なハリケーンは2つだけだった。

 ただ「今後は、そうはいかないだろう」と論文の主執筆者で、MIT-ウッズホール海洋研究所海洋学共同プログラムの博士課程の学生、リジー・ウォレス氏は指摘する。コアサンプルの分析によると、近年の静けさはおそらく例外であり、単に運がよかっただけだと、同氏は言うのだ。(参考記事:「解説:黄河に古代の大洪水跡、伝説の王朝が実在?」

 気候変動が進むなか、ハリケーンはこの先、雨量を増し、激しさを増していくだろう。古代のコアサンプルが物語るのは、将来、この島を含む広いエリアは、現代の観測記録から推測されるよりも、強いハリケーンに見舞われるリスクが高いということだ。

次ページ:ブルーホールは記録保管所

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