サン・ペトロニーオ聖堂から見下ろすボローニャの中央広場マッジョーレ広場。(PHOTOGRAPH BY CATHRINE STUKHARD, LAIF/REDUX)

 憧れの観光名所にせっかく来たのに、押されたり、肘で突かれたりといった体験は、せっかくの旅を台無しにしてしまう。

 近年、観光地が受け入れられる以上に訪問客が押し寄せる、いわゆる「オーバーツーリズム」が問題になっている。イタリアではベネチアが最たる例だ。ベネチアには毎年、約3000万の旅行者が訪れ、運河や広場は人であふれかえる。当局はついに重い腰を上げ、抑制策を考案。2020年7月以降は、日帰り旅行者に対する税金が導入される。(参考記事:「観光客の波がベネチアを台無しにする?」

 ベネチアだけでなく、ローマやフィレンツェも過剰な訪問客に悩まされている。だが、イタリアにはほかにも魅力的な都市がたくさんある。これから紹介するのは、旅行者が比較的少なく、それでいて満足できる訪問先だ。次にイタリア旅行をするときは、ぜひ立ち寄ってみてほしい。(参考記事:「脱オーバーツーリズム 混雑しない穴場の観光地5選」

ボルツァーノ

 イタリア北西部の町ボルツァーノには、世界で最も“クール”な人物が住んでいる。「エッツィ」の愛称を持つ5300年前のミイラ、アイスマンだ。ボルツァーノ県立考古学博物館を訪れ、アイスマンを見ると、古代の山中で起きた殺人事件に思いをはせることができる。アイスマンより平和に山を登りたければ、3つあるケーブルカーの一つに乗り込み、牧草地や森林、農場が広がる山を目指すといい。(参考記事:「凍結ミイラ「アイスマン」壮絶な最期の旅路を解明」

 街に戻ると、ファシストのモニュメントとバイエルン時代のバロック様式のアーチ型建造物という意外な組み合わせが目に留まる。イタリアとドイツの融合はレストランにも見られる。多くのレストランがスパゲッティとシュペッツレの両方を提供している。食事のお供は地元産のワインだ(プロセッコにエルダーフラワーのシロップを入れた人気のアペリティーボ、ヒューゴから始めよう)。

持続可能な旅のヒント:毎年11月下旬から1月上旬まで、「グリーン・イベント」の認証を受けたボルツァーノ・クリスマスマーケットが開催され、グリューワインなどの温かい飲み物を再利用可能なマグカップで味わうことができる。公共交通機関で近くの町のマーケットをはしごして、クリスマス気分に浸るのもおすすめだ。

左:自転車や歩行者が行き交うボルツァーノの市街地。
右:ボルツァーノ郊外のE5パスを歩くハイカー。E5パスはフランスのラ岬からイタリアのベローナまで続く全長3000キロ超の小道だ。(PHOTOGRAPHS BY HEIKO MEYER, LAIF/REDUX)

トリノ

 かつては、ヨーロッパで一番高いれんが造りの建物だった167.5メートルのモーレ・アントネリアーナ。そのテラスからは、イタリア北西部に位置するこのエレガントな都市と雄大なアルプス山脈を一望できる。緑豊かな大通りを進めば、高級チョコレートのブティックやユベントスFCのアリアンツ・スタジアムにたどり着く。サッカーの試合を見てもいいし、スタジアムの内部を回るツアーも用意されている。

 映画ファンにおすすめなのは、国立映画博物館(モーレ・アントネリアーナ内にある)と年1度のトリノ映画祭(11月開催)だ。また、トリノは「イタリアのデトロイト」という異名を持つ。フィアットの本拠地であり、200台以上のコレクションを誇る国立自動車博物館もある。さらに、世界最古のエジプト博物館、壮大な宮殿群、イタリア初の国立公園グラン・パラディーゾまであり、思わず滞在を延長してしまうかもしれない。

持続可能な旅のヒント:ビシT(Bici-t)のかわいい3人乗り三輪車で街の中を周ってみよう。「運転手」と音声ガイド(英語、イタリア語、フランス語に対応)が付いたツアーを予約してもいいし、車両をレンタルすれば、自分でこぐこともできる。

ギャラリー:人混みなし イタリアのおすすめ穴場観光都市、写真9点(画像クリックでギャラリーページへ)
モーレ・アントネリアーナと同じくらいの高さを飛ぶ気球。トリノのモーレ・アントネリアーナはかつて、ヨーロッパで最も高いれんが造りの建物だった。(PHOTOGRAPH BY ALEXANDER POHL, NURPHOTO/GETTY IMAGES)

レッツェ

「南イタリアのフィレンツェ」とも呼ばれるレッツェ。混雑したトスカーナ州のフィレンツェと同様、地元産の貴重な石灰岩を使用したバロック様式の華麗な建造物を堪能できる。長靴の形をしたイタリアのかかとに位置し、豊かな歴史を育んできた都市だ。見どころはサントロンツォ広場にあるローマ時代の円形闘技場と魅力的なファッジアーノ美術館。トイレを修理していた男性が2000年以上前の遺跡を発見し、そこに美術館がつくられた。(参考記事:「ダ・ヴィンチとフィレンツェ  没後500年、天才とその芸術を再現する役者たち」

 この街で何をするにせよ、一日の始まりにはカフェ・レッツェーゼ(アーモンドミルクを入れた冷たいエスプレッソ)、一日の終わりにはプリミティーボかネグロアマーロ(地元の赤ワイン)を飲んでほしい。

持続可能な旅のヒント:ラ・カルタペスタ・ディ・クラウディオ・リゾに行けば、レッツェ伝統の張り子に出会うことができる。聖人の張り子はもちろん、ピッティカ(タランテラのレッツェ版)を踊る人など、地元の文化から着想を得た作品もある。

左:石灰岩でできたバロック様式の大聖堂。レッツェには、フィレンツェを連想させる建造物がいくつもある。
右:レッツェの中心部にあるローマ時代の円形闘技場。現在もパフォーマンスが行われている。(PHOTOGRAPHS BY ROBERT HARDING PICTURE LIBRARY, NAT GEO IMAGE)

次ページ:美食家にはボローニャ、シチリア島ならパレルモ

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