絶滅寸前の有袋類、化石の地への移住で保護へ、豪

分断されたブーラミスの生息地、山地から化石時代に仲間が繁栄した低地に

2019.11.08
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奇妙で特徴的な歯

 アーチャー氏によると、ブーラミスとその直接の祖先には、よく目立つ特徴があるという。それは、非常に奇妙で危険そうな小臼歯だ。「丸のこを半分にしたような、大きくて曲線的で、端がギザギザになっている歯です」

 この歯のおかげで、今日のブーラミスはマキの堅い種子にひびを入れられるのだが、昔は別の用途があった可能性がある。

 とはいえ、現生のブーラミスとその祖先の歯はかなりよく似ているため、「機能に重要な違いがあったとは、よほどの勇気がなければ主張できません」と氏は言う。

 現生ブーラミスとその祖先は別々の種だとされている。だがアーチャー氏は、化石記録をたどれば、時間の流れとともにランダムな遺伝的変化が少しずつ起きて、同じ動物が徐々に変化していったのがわかると言う。

 ブーラミスの祖先の個体数は多かった、と氏は話す。「ですから、ブーラミスを気候変動の犠牲者にしてしまう前に、小さなコロニーを保護して繁殖させ、その子孫たちを祖先の森に放してはどうかと提案しているのです」

ブーラミスの絶滅の危機はますます深まっている。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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追い詰められるブーラミス

 そもそも、今日のブーラミスたちはなぜ山岳地にいるのだろうか? アーチャー氏は、「理由はよくわかりません」と答える。「ただ、オーストラリアは約1500万年前から乾燥が進み、中央部から熱帯雨林が失われたことがわかっています。おそらくその過程で一部のブーラミスが山を登って生き延び、残りは絶滅したのでしょう」(参考記事:「特集:渇くオーストラリア」

 その結果、現在のブーラミスは、かつての生息地のはずれで細々と生き延びているのかもしれない。

 低地雨林はブーラミスにとって非常に魅力的な場所かもしれないが、今となっては彼らがそこに帰るすべはない、とアーチャー氏は言う。気候変動と人間の土地開発により、山岳地方と低地雨林をつなぐ森林地帯が失われてしまったからだ。

「人間が世界を非常に速いペースで作り変えているため、多くの種は変化に適応できません。ですから人間は、自力では生き延びられそうにない種が生き延びられるように手を貸す責任があるのです」とアーチャー氏。(参考記事:「人類が変えた地球の景観10点」

 氏と10人を超す仲間たちは、ブーラミスを繁殖させて、慎重に選び出した低地森林に放すプロジェクトに着手した。「1、2年後の実現を目指しています」と氏は言う。

ギャラリー:消えゆく生命のポートレート(写真クリックでギャラリーページへ)
ハイイロウーリーモンキー
Lagothrix cana (絶滅危惧種)
ペットとして育てられ、栄養失調になった幼い雌。子を捕まえるときに、母親は殺された可能性が高い。ブラジル環境・再生可能天然資源院 野生動物検査センター (PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)

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