火葬で良いのか? その環境負荷と新たな選択肢

増える人生最後の選択肢、液状に分解する方法や堆肥化も

2019.11.07
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人生最後の新たな選択肢

 自らの死に際して、そこまで多くの燃料を消費したくないし、大量の二酸化炭素も出したくないと考える人にとっては、アルカリ加水分解の方が魅力的な選択肢かもしれない。「水火葬」や「アクアメーション」とも呼ばれ、遺体を液状に溶かすこの方法は、現在少なくとも米国の18の州で合法になっている。

 アルカリ加水分解は、「カーボン・フットプリントが、従来の火葬に比べて約10分の1です」とメンキン氏。「かかる時間は同じですが、火葬ほど高温にする必要がなく、処理のほとんどは水が担います」

 火葬と同じように、アルカリ加水分解でも後に骨などが残るため、遺族が骨つぼに収めて保管したり、特別な場所にまいたりできる。また、この方法の過程で、どろどろした有機液体がたくさん出るが、これにはとても実用的な用途がある。

「一部の施設ではこの液体が取り出され、農場で使われています。優れた肥料になるのです」と、メンキン氏は話す。「ですが大半の施設では、自治体の下水設備へと送られます。実はこの液体が廃水の水質改善に役立つので、多くの下水施設が歓迎しています」

 今後、火葬に代わる選択肢はさらに増えるだろう。2019年、ワシントン州は米国で初めて、人の遺体の堆肥化を法律で認めた。この方法は自然有機分解、またはリコンポジション(再構成)と呼ばれ、2020年に始まる予定だ。遺体を有用な土に変え、その土は残された家族や友人が使うことも、同州のピュージェット湾地域に寄付することもできる。また米国全域で、いわゆる自然葬を選ぶことも法律で認められている。化学薬品も、コンクリートも合成物質も加えることなく、遺体が土の中で分解される方法だ。

 結局のところ、埋葬の準備に当たっては多くの要素を考慮に入れなければならない。どれだけ費用がかかるのか、宗教的・文化的慣習と合致するか、その地域で可能かどうか、などだ。しかし、多くの地域で人生最後の選択肢が増えるなか、クリーンな方法で土に還るのは、以前より少しは簡単になりつつある。

ギャラリー:長老をいぶしてミイラに、アンガ族の伝統に密着(画像クリックでギャラリーへ)
ゲムタスさんの遺体を煙でいぶしてミイラにする遺族。ミイラ作りが終わるまで、この場を離れることも、体を洗うことも許されない。(PHOTOGRAPH BY ULLA LOHMANN)

文=BECKY LITTLE/訳=高野夏美

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