星間物質は3万度超、ボイジャー2号が初の直接観測

太陽圏外に脱出からほぼ1年、星間空間の謎はますます深まる

2019.11.06
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漏れやすかった境界面

 だが、ボイジャー1号のもたらした情報は完全ではなかった。プラズマの温度を測定する機器が故障していたのだ。対して、ボイジャー2号の機器は正常に機能していたため、1年前の2018年11月5日にヘリオポーズを越えた際、境界面をより正確に観測できた。

 おかげで、ヘリオポーズに2億2400万キロ(1.5天文単位、太陽と地球の距離の1.5倍)まで近づくとプラズマが減速し、温度が上がり、密度が高くなることが初めて明らかになった。また、境界面の外側にある星間物質の温度は予想よりも高く、少なくとも3万度であることもわかった。

 さらに、ボイジャー2号はヘリオポーズがとても漏れやすい境界面であることも確認した。入ってくるものもあれば、出ていくものもある。ボイジャー1号はここを通過する前に、星間粒子がヘリオポーズを突き抜けて太陽圏内へ侵入していたことを観測したが、ボイジャー2号は逆に、低エネルギーの粒子がヘリオポーズの外へ流れ出て、その先数百万キロに渡って伸びているのを観測した。

 もうひとつ不可解な点がある。ボイジャー1号では、ヘリオポーズまであと12億2500万キロに迫ったところでも、流れ込んできた星間物質のせいで太陽風が停滞する領域を発見した。一方、ボイジャー2号でも、ほぼ同じぐらいの場所で太陽風の停滞を観測したものの、太陽風は全く異なる動きをしていた。

「とても奇妙です。詳しいことを知るには、もっと多くのデータが必要です」と、コーエーン氏は言う。

ギャラリー:宇宙探査機ボイジャー2号の壮大な旅の記録 画像5点(写真クリックでギャラリーページへ)
1981年8月17日、ボイジャー2号は土星の環からおよそ900万キロに近づき、可視光と紫外線による鮮やかな着色画像を撮影した。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL)

今後の星間空間の探査は?

 これらのパズルを解くには、太陽圏の全体像を知る必要があるだろう。ボイジャー1号は、太陽圏が星間物質と衝突する最先端近くから外へ脱出した。一方ボイジャー2号は、その左側から脱出している。太陽圏の後方に関してはまだ何のデータもないので、全体像はわからない。星間物質の圧力を全方向から受けているため、太陽圏はおおよそ球形をしていると考えられているが、彗星のような尾を持っているか、あるいはクロワッサンのような形をしている可能性もある。

 太陽圏の外へ向かって現在旅を続ける探査機は他にもあるが、ヘリオポーズのデータは期待できない。時速5万キロという猛スピードで遠ざかっているNASA のニューホライズンズ探査機は、2030年、ヘリオポーズまであと16億キロという時点で燃料切れとなる。そのため、新たな探査計画が必要だ。目指すは、太陽系外縁部と、その先の太陽風が届かない未知の宇宙空間を探査する50カ年多世代計画だ。(参考記事:「史上最遠の天体の接近撮影に成功、雪だるま形」

「今は私たちを取り巻く巨大な泡のたった2カ所を通過しただけです」と、論文の共著者でジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所の名誉所長であるスタマティオス・クリミギス氏は会見で訴えた。「2つの例だけでは、十分ではありません」

 ランキン氏をはじめとする新しい世代の科学者たちは、バトンの引き継ぎに意欲を見せる。ランキン氏は、カリフォルニア工科大学でボイジャー1号の星間データを使って博士論文を執筆した。ストーン氏は、その担当教官だった。

「私が生まれる前に打ち上げられ、今なお活躍している探査機です。その最先端データを使った研究は、素晴らしい経験でした」とランキン氏は述べる。「ボイジャーと長い間ともに過ごしてきたすべての方々に感謝しています」

ギャラリー:宇宙探査機ボイジャー2号の壮大な旅の記録 画像5点(写真クリックでギャラリーページへ)
1986年1月24日、ボイジャー2号は巨大な氷の惑星である天王星に約8万キロまで接近し、見事な青い惑星の写真を地球へ送った。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL)

文=Michael Greshko/訳=ルーバー荒井ハンナ

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