アマゾンの熱帯雨林は騒々しい。ジャングルの動物たちが、自分の声を届かせようと叫ぶため、いつでも不協和音に満ちている。そうした騒音の中、オスのスズドリ(Procnias albus)は必勝戦略を編み出した。世界一大きな声で鳴く鳥になればいいのだ。
象牙のように白いスズドリは、ブラジル北部の山地の森林で、ひときわ高くそびえる枯れ木のてっぺんに止まり、口を大きく開けて、ぞっとするほど耳障りな甲高い声で鳴く。(参考記事:「怖すぎる 夜の鳴き声のクセがすごい動物たち」)
「地球のものとは思えません」と米マサチューセッツ大学アマースト校の生物学者ジェフ・ポドス氏は言う。スズドリの鳴き声を調査した氏らの論文は、2019年10月21日付けで学術誌「Current Biology」に発表された。(参考記事:「新種の霊長類を発見、決め手は奇抜な鳴き声」)
これまで世界一大きな声をもつとされた鳴き鳥は、同じくアマゾンに生息する同じ科のムジカザリドリ(Lipaugus vociferans)だった。だが論文によると、スズドリの鳴き声は、ムジカザリドリよりも9デシベル以上大きく、125デシベルに達するという。これは、ロックコンサートでスピーカーの隣にいるときの音量だ。ちなみに、普通の人間の声は約60デシベルである。
それよりも科学者が驚くのは、スズドリのオスが、自分に関心を示すメスの目の前で大声を浴びせかけたことだ、と米コーネル大学鳥類学研究所で生物音響学の上級研究員を務めるラス・チャリフ氏は説明する。氏は今回の研究には参加していない。
チャリフ氏は、オスはメスに印象づけるために、声が大きくなるように進化してきたのかもしれないと考えている。「おそらくメスは、鳴き声の大きさでオスを品定めし、より大きく鳴くオスを好むのでしょう」と氏はメールに書いている。(参考記事:「【動画】声で恋敵を特定、争い回避、ゾウアザラシ」)
「これは立派な研究だと思います。綿密に実施され、しっかりした結果を出しています」とチャリフ氏は評価する。野生動物の鳴き声を録音するのは、非常に難しいからだという。今回の研究は、重要な知見を性選択の研究に与え、動物たちがパートナーを得るためにどれほど極端な手段を使うかを教えてくれる。(参考記事:「2018年を「鳥の年」宣言、鳥はなぜ大切なのか?」)
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