自然破壊のせいで、今後数十年間のうちに、世界で最大50億人もの人々が食料と水不足に直面する。特に影響が大きいのはアフリカと南アジアだ。また、沿岸部に暮らす何百万という人々が、激しい嵐のせいで危険にさらされる。そんな予測が、10月11日付けの学術誌「サイエンス」に掲載された論文「Global Modeling Of Nature’s Contributions To People(自然の恵みの全世界モデリング)」に発表された。
「数十億人が2050年までに影響を被ると聞いてショックを受ける人がいなければいいのですが」と、論文の筆頭著者で米スタンフォード大学の景観生態学者レベッカ・チャップリン・クレイマー氏は語る。「ご存じの通り、私たちは多くの点で自然に依存しています」(参考記事:「2050年の人口は100億人へ、食料どうまかなう?」)
2019年5月に、全世界を対象とした生物多様性の評価報告書が初めて発表され、自然破壊が急激に進んでいることが明らかになった。国連の科学者組織である「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が作成したその報告書「Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services(世界の生物多様性と生態系サービスに関する評価報告書)」によれば、人間の活動が原因で、100万種の動植物が絶滅の危機にあり、地球の陸地の75%以上、海洋の66%以上が著しく変化しているという。
飲料水の供給、海岸の保護、作物の受粉
人類の幸福は自然の恵み、つまり、「生態系サービス」に左右される。今回発表されたモデルでは、飲料水の供給、海岸の保護、作物の受粉という3つの要素に着目した。
チャップリン・クレイマー氏によれば、これらの生態系サービスが減少することで、より直接的に自然の恵みに依存しているアフリカと南アジアの人々が最も大きな打撃を受けることが判明したという。一方、豊かな国の人々は整ったインフラや食料輸入のおかげで、影響を和らげられる。
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