南極の棚氷が危ない、「両面」攻撃の脅威、研究

南極大陸の「城壁」である棚氷は数々の脅威にさらされている

2019.10.13
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 科学者たちはこれまでグリーンランドや南極半島で、融水湖を徹底的に調べてきた。今回の研究チームは、南極大陸で最も寒く、最も安定した氷がある東南極で初めて系統的な調査を行った。

 論文の著者である英ダラム大学の氷河学者クリス・ストークス氏らの研究チームが2017年1月の衛星データを調べたところ、東南極の海岸線に沿って、なんと6万5000個以上もの湖や池が見つかった。「外縁部を調べると、あらゆるところに湖がありました。本当に驚きました」と、ストークス氏は語る。

 湖の数より心配だったのは、その分布だった。湖の多くが、棚氷が水圧破砕で崩壊しうる領域に集まっていたのだ。「私たちの予想よりはるかに、水圧破砕が起こりうる密度に近づいていました」とストークス氏。

 注意を要するのは、今回の研究で1回の融解シーズンのみであること、しかもそれは異例なシーズンだったことだ。2016年末から2017年初頭にかけて、温暖な天候と大気循環の異常によって、南極大陸の海岸線で海氷が激減していたのだ。

 ストークス氏らは、ほかの年の衛星データも分析しようと計画している。だが、たとえ2017年が例外だったとしても、今回の研究は、東南極の棚氷の一部が、予想以上に脆弱である可能性を示唆している。「気温が高くなっているので、暖かい年はもっと増えるでしょう」と、米コロラド大学ボルダー校の氷河学者アリソン・バンウェル氏は警告する。氏は今回の研究には参加していない。(参考記事:「解説:気候変動、IPCC最新報告書の要点は?」

プロセス2:棚氷を底を流れる「川」

 東南極では融水湖が棚氷を脅かす一方で、西南極では見えない力が氷を下から攻撃している。温かい深層水が上昇してきて、棚氷の底にできた「川」のような水路を流れ、削っているのだ。

 米ウースター大学の氷河学者カレン・アリー氏は数年前、衛星画像を使ってこうした「氷の裏の川」を調べていた。なかには非常に大きく、最大で幅5km、深さ数十m、長さ数十kmに及ぶものもあった。氏はまた、こうした川が、しばしば「シアマージン(shear margins)」と呼ばれる、棚氷の端の薄くなった場所の下側にできることにも気づいた。

 アリー氏らは今回、衛星画像を使ってその理由を解明しようとした。氏らの論文によると、川の形成はまず、陸上にある氷河の一部が延びて薄くなるところから始まる。この薄くなった部分が海に到達すると、周囲の厚い氷に対して持ち上がるため、棚氷の下から見るとへこんだようになる。そこに、上昇してきた温かい海水が流れ込むことで「川」になるのだ。

次ページ:1年で10m削った例も

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