枯渇する海の資源
国連食糧農業機関(FAO)によると、魚資源の3分の1は生物学的に持続不可能な水準で漁獲されている。例えばクロマグロは乱獲のため激減した。ここ数十年間、近海で水産資源が枯渇した国々は、公海や他国の領海へ大型のトロール船を送り出すようになった。(参考記事:「クロマグロ 乱獲の果てに」)
アフリカや南極海、太平洋では、3000隻の中国漁船が操業している。昨年行われた調査では、2014年に公海で捕れた魚の半分近くが、中国と台湾籍の船によるものだったことが明らかになった。(参考記事:「公海での漁業は「無益」、新たな研究を解説する」)
昨年末、中国は2020年までに遠洋漁船の数を3000隻までに留め、燃料費の補助を減らすと約束した。2017年8月には、同国の農業農村部が「沖合漁業の従来の開発モデルは見直す必要がある」と声明を出した。(参考記事:「フカヒレ販売禁止に賛否、サメを守れるのか、米国」)
調査結果によると、補助金の増加は横ばいになっているようだが、EU(欧州連合)は6月に漁船を増やすための補助金を復活させる動きを見せた。EUによる補助金はすでに世界全体の11%になっており、2018年には有害な補助金を20億ドル(約2150億円)支給している。
「特に懸念されるのは、EUが他の国にとっての前例になってしまっている点です」と、スマイラ氏は言う。WTOが要請していた補助金データを70カ国が提出していないという事実も、この問題の難しさを浮き彫りにしている。
「まるで探偵の仕事をしているようでした」。スマイラ氏のチームは、補助金額を推定するためにいくつもの情報源からデータをかき集めなければならなかった。
ジャレット氏は、世界の補助金のうち半分を、たった5カ国が占めていると指摘する。「もしこの5カ国が大きな決断をしてくれれば、有害な補助金を大幅に減らせるでしょう。そして、最終的には水産資源が回復し、健全な海の未来を取り戻せると期待しています」