太陽系外から来たボリゾフ彗星、意外な事実が判明

天文学者が大注目の観測史上2例目の恒星間天体、徐々に明らかになる正体

2019.10.09
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 また、ボリゾフ彗星が太陽光で温められるにつれ、その表面から飛び散るちりとガスがロケットの噴射のように働き、彗星の軌道がずれる可能性もある。天文学者らはこうした重力以外の力を明確に把握していないため、これを計算に入れ込むことができない。

 そのうえ、ボリゾフが通ってきた道をたどるには、時計を巻き戻して、その当時に銀河系の星がどこにあったかを確かめる必要がある。しかし現時点でそれを確認できるのは、銀河系にあるほんの一握りの星についてだけだ。

「まずは銀河系の3D動画を作成し、それを巻き戻す必要があります。しかもそれが実現したとしても、おおもとの星にたどり着けるわけではありません。わかるのは、彗星が最後に近づいた恒星だけです」と、バニスター氏は言う。

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 サウスウエスト研究所の天文学者マーク・ブイエ氏は、ボリゾフが複数の恒星の前を通過するところを観測できたなら、その大きさと形状がより正確に確認できるだろうと述べている。しかしそうした観測を行うには、ボリゾフの軌道を今よりもずっと正確に把握する必要がある。

「今どこにあるのかわからず、1年後に太陽系のどこにあるのかもわからないなら、この彗星が100万年前、正確にどの星からやってきたかなど、知りようがありません。今の時点で彗星の故郷を割り出す能力がわれわれにあるという意見には、大いに疑問を感じます」と、ブイエ氏は言う。

新たな彗星探査計画も

 とはいえ、研究はまだ始まったばかりだ。ボリゾフ彗星は来年までは見えており、いちばんよく見える時期もこれからやってくる。太陽に最接近するのは12月8日頃で、ハッブル宇宙望遠鏡、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡、アルマ望遠鏡など、世界最大級の望遠鏡での観測計画が山ほど予定されている。

 いつの日か、次のボリゾフ彗星やオウムアムアのような天体が太陽系を通るときには、人類はしっかりと準備を整えていることだろう。天文学者らは、チリに建設中の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)なら、より多くの恒星間天体を発見できると期待を寄せている。(参考記事:「太陽系外から来た天体、地球大気圏で焼失か?」

「ボリゾフ彗星が現れる前までは、LSSTが稼働したら、1年に1つは恒星間天体が見つかるだろう予測されていました」と、ブイエ氏。「しかしボリゾフ彗星の出現が、恒星間天体はそこら中に存在し、外観や特徴も多様だということを示唆しているのだとしたら、もしかするとわれわれは、とんでもない時代を迎えようとしているのかもしれません」(参考記事:「逆回りの珍しい小惑星、「太陽系外から来た」説」

 ブイエ氏はまた、LSSTによって、太陽系に接近する恒星間天体をこれまでよりも早く発見できるかもしれないと述べている。そうなれば観測の時間をより長く確保し、さらには彗星探査もできるようになるかもしれない。

 彗星の探査をよりすばやく行う計画は、実はすでに発表されている。2019年6月に欧州宇宙機関が、2028年に探査機を打ち上げ、地球と太陽の重力がつり合う位置で待機させる彗星探査計画「コメット・インターセプタ―」を発表した。探査機はそこで、太陽系内の新たな彗星や、次の恒星間彗星が来たら接近して観測できるよう備えることになる。

 ドーンズ氏は言う。「いつでも彗星に近づける探査機を用意できるのはすばらしいことです。彗星の探査は、まったくの手つかずなのですから」

【参考ギャラリー】小惑星、彗星 地球にぶつかったら大変な天体12点(写真クリックでギャラリーページへ)
2004年5月、青と紫の光を放ちながら宇宙空間を移動する彗星「C/2001 Q4」。この写真では、別名「ニート(NEAT)」とも呼ばれるこの彗星のコマ(頭部)と尾の一部が、まるで無数の星からできているように見える。米国アリゾナ州にあるキットピーク国立天文台が撮影。(PHOTOGRAPH COURTESY T. RECTOR (UNIVERSITY OF ALASKA ANCHORAGE), Z. LEVAY AND L. FRATTARE (SPACE TELESCOPE SCIENCE INSTITUTE), AND NATIONAL OPTICAL ASTRONOMY OBSERVATORY/ASSOCIATION OF UNIVERSITIES FOR RESEARCH IN ASTRONOMY/NATIONAL SCIENCE FOUNDATION)

文=MICHAEL GRESHKO/訳=北村京子

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