太陽系外から来たボリゾフ彗星、意外な事実が判明

天文学者が大注目の観測史上2例目の恒星間天体、徐々に明らかになる正体

2019.10.09
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「オウムアムア」とは対照的

 ボリゾフ彗星について、おそらく最も意外な事実といえば、見た目がたいそう平凡なことだろう。スペイン、ポーランド、オランダの天文学者が集めた初期のデータは、炭素を多く含む赤みがかった表面など、この天体の外観が太陽系の彗星とよく似ていることを示している。(参考記事:「太陽系に飛来した天体オウムアムア、極端な楕円形」

 その組成もまた太陽系の彗星に近い。9月27日付けで学術誌「Astrophysical Journal Letters」に発表された研究では、ミーチ氏や、クイーン大学ベルファスト校の天文学者アラン・フィッツシモンズ氏が属するチームが、ボリゾフの凍った表面が太陽に溶かされることで、毎秒170グラムのシアン化物を放出していると報告している。

 これは特段驚くようなことではない。太陽系の彗星であっても、シアン化物は最初に検出される物質のひとつだ。さらにボリゾフは、放出するガスの量においても目立ったところはない。その量は、2014年に内太陽系を通過したサイディングスプリング彗星の半分にも満たない。(参考記事:「10月、火星に彗星が大接近」

 研究者らはまた、ガスとちりに包まれた彗星の核の大きさについても、さほど大きくないという予測を立てている。現在のところ、この彗星の核は幅8キロより小さく、おそらくは800メートルから3.2キロ程度と推測されている。

「オウムアムアが非常に風変わりで、今回の天体が典型的な太陽系の彗星によく似ているというのは皮肉なものです」と、ドーンズ氏は言う。(参考記事:「飛来天体オウムアムアに炭素の膜、宇宙船説を否定」

【動画】太陽系外縁に向かうふたつの宇宙船
2機のボイジャーは太陽系の大惑星の観測を終えた後、現在は恒星に向かって進んでいる。(NASA'S SCIENTIFIC VISUALIZATION STUDIO / TOM BRIDGMAN)(解説は英語です)

謎に包まれた経路

 ポーランドのある天文学者チームは、ほかの研究者に先駆けて、ボリゾフ彗星が通ってきた恒星間宇宙の経路を推測した。論文の投稿サイト「arXiv」にアップロードされた論文において、同チームは、ボリゾフ彗星が約100万年前にクリューゲル60という連星系の5.4光年以内を通過したと示唆している。

 当時ボリゾフ彗星は、時速約1万2000キロという非常にゆっくりとしたスピードで動いていたという。より多くのデータが集まれば計算は変わってくると断りながらも、これを踏まえれば、この彗星がクリューゲル60の近くを通った可能性は高いと、研究者らは述べている。

 彼らのチームは同種の仕事においてすでに実績があり、太陽系の外縁で形成された彗星についても研究結果を発表している。しかしながら、今の時点でボリゾフ彗星の経路を推測すれば、懐疑的な意見が多く出るのは避けられない。

「時期尚早だと思います」とミーチ氏は言う。その理由のひとつは、ボリゾフ彗星をまだごくわずかな時間しか観測できていないことだ。また、ちりとガスに包まれていて、彗星の核が正確に見極められないせいもある。

 加えて、今のところボリゾフは、地平線近くの低い位置に見えているだけだ。つまり、彗星からの光が望遠鏡に届くまでに大量の空気の中を通るため、大気の層によってさらなるエラーが引き起こされる可能性が高い。

「わたしたちが見ているのは、とうてい精密とは言えない大量のデータです。これは観測者がずさんなせいではなく、ぼんやりとした天体の中心を正確に見定めるのが非常に難しいからなのです」と、ミーチ氏は言う。

次ページ:新たな彗星探査計画も

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