【動画】道具を使うイノシシ、世界で初めて観察

飼育下のビサヤイノシシ、巣作りのときだけ見られる行動

2019.10.08
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イノシシ科では初めて

 チンパンジーやカラス、イルカなど、道具を使用する野生動物は多い。だが、野生のイノシシと家畜化されたブタを含むイノシシ科の17種のうち、道具使用が報告された種はこれまで1つもなかった。イノシシ科は高度な知性を持つことで知られているため、事例がないことにルート=バーンスタイン氏は驚いたのだった。(参考記事:「サルにも「石器時代」、3000年継続中で石器も変化」

 しかし、野生イノシシはほとんど研究されておらず、多くの場合、絶滅危惧種に分類されているため、そうした行動が人間の目に触れることがなかったとしても、そうおかしなことではないと、同氏は説明する。(参考記事:「ラッコが道具を使う謎、考古学の手法で迫る」

 道具使用は、ヒトにも共通する特性であるため、特に興味深いという。「私たちに、動物との近さを感じさせてくれます」と同氏は語る。「そして、すべてがつながっている、と気付かせてくれるのです」(参考記事:「最初に道具を使った人類はアウストラロピテクス」

行動の順番と文脈

 ルート=バーンスタイン氏らは、イノシシの両親と2匹の子どもたちをビデオカメラで撮影し、道具を使っているところを2016年に4回、2017年に7回記録した。もっと扱いやすい道具を好むかもしれないと考え、料理用のヘラを4つ、囲いの中に入れてみたが、そのうち1つが2回使われただけだった。

参考ギャラリー:タコや魚からブタまで、とても賢い動物たち14選(写真クリックでギャラリーページへ)
39歳のボノボ「カンジ」は、優れた言語能力を持つことで知られている。単語に対応する数百種類の記号を使って意思伝達も行える。(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NAT GEO IMGE COLLECTION)

 調査チームが気づいたのは、イノシシたち、特に母イノシシのプリシラが、巣作りの工程の真ん中あたりで道具を使うということだ。ルート=バーンスタイン氏によれば、このように行動の順番が一定であることと、道具を使うことで実際に土が動かされていることから、イノシシたちの行動は、科学的に道具使用だといえる基準を満たしているのだという。

 研究者たちは、おそらくプリシラが自分で道具の使い方を覚え、その知識を繁殖相手や子どもたちに伝えたのだと考えている。(参考記事:「700年前のサルの道具を発見、100世代継承」

 データが少ないうえ、今回の行動が飼育下ならではのもので、野生では見られない可能性があることは、ルート=バーンスタイン氏も認識している。とはいえ、飼育下で頻繁に起きるのは、同じ場所を行き来するといった繰り返し行動が多いのに対して、今回の道具使用はめったに見られず、巣作りという特定の文脈でしか起こらなかったという点を氏は強調する。(参考記事:「食べ物を洗う、グルメなイノシシが見つかる」

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