地下水利用は時限爆弾、世界の川が危機に、研究

2050年までに地下水使う流域の40~80%で「しきい値」を超えると論文発表

2019.10.05
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米アリゾナ州を流れるサンペドロ川。過去数十年で流量が減少した。近隣で地下水を汲み上げたことが原因だという。水位が低下した影響は、流域の動植物の生息地に現れている。(PHOTOGRAPH BY WILL SEBERGER/ZUMA PRESS, INC/ALAMY)
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 地面の下には、大量の地下水が隠されている。そこは「地下帯水層」と呼ばれ、淡水としては氷床に次ぐ水量を誇る。地下水は、世界の川にとっても極めて重要な役割を果たしており、干ばつの際でも川の流れが保たれているのは地下水があるおかげだ。

 だが人類は、地下水を何十年にもわたって大量に汲み上げてきた。その結果、世界中の多くの河川生態系が「ゆっくりと干からびつつある」とする論文が、10月2日付けで学術誌「Nature」に発表された。地下水が汲み上げられている流域の15%〜21%が、すでに重大な「しきい値」を超えており、その比率は、2050年までに40%〜79%に急増する恐れがあるという。

 しきい値を超えるとは、つまり、川の水が足りなくなり、流域に暮らす動植物が危機にさらされることだと、論文の筆頭著者であるドイツ、フライブルク大学の水文学者インゲ・デ・グラーフ氏は言う。

「その生態学的な影響は、まさに時限爆弾のカウントダウンのようなものです」と同氏は話す。「今、地下水を汲み上げても、10年後、あるいはもっと後にならないと、その影響はわかりません。現在の私たちの行為が、今後何年も環境に影響を与えるのです」

現代の生活を支える地下水

 米国アリゾナ州を流れるサンペドロ川は、この地域でダムが造られていない最後の川だ。以前はよく氾濫を起こし、渡り鳥の鳴き声が響き、川の深みには珍しい魚が泳いでいた。

 しかし1940年代、近隣に井戸が掘られ、きれいで冷たい水を地下帯水層から汲み上げ始めた。

 すると、川を流れるかなりの水は、雨や上流からの雪解け水ではなく、地下水に由来することが判明した。帯水層から水を汲み上げるほど、川を流れる水は減り、その影響はサンペドロ川の水量だけでなく、流域に広がる湿地や木々、動物にも及んだ。(参考記事:「地下水が危機、今世紀半ば18億人に打撃」

 地下水は、現代生活の多くを支える縁の下の力持ちだ。世界の食物の約40%は、地下から汲み上げた水で育てられている。

 しかし、地下水の源である帯水層に水を満たすには、数百年、あるいは数万年もかかる。現在、帯水層にたまっている水は、2万年前に地面の割れ目から染み込んだものかもしれないのだ。

次ページ:ほんの少し減るだけでも影響は重大

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