地磁気の逆転はどのくらい頻繁に起こりうるのだろう? ガレ氏らは答えを求めて、ヘリコプターとゴムボートを乗り継ぎ、最後は徒歩で危険な崖を訪れた。約5億年前のカンブリア紀中期のなかでも、まだほとんど調査が及んでいない時期に形成された地層だ。ここの岩石は、はるか昔に暖かく浅い海だった頃に、砂が磁性鉱物を閉じ込めながら堆積してできたものだ。

 ガレ氏らは2000年代初頭にこの地を初めて訪れ、ほぼ垂直に切り立った崖から119点のサンプルを採取し、分析した。その結果、カンブリア紀中期に、地磁気の逆転が100万年あたり少なくとも6〜8回起きた時期があったことがわかった。

「これほど頻繁な逆転は予想していませんでした」とガレ氏はメール取材に答えるた。当時は4、5回でも多いとされていたのだ。

 この結果が気になった彼らは、もっとサンプルを採取しなければと考えた。2016年の夏に現地を再び訪れて、今度は10〜20cmごとに岩を切り出し、550点の小さなサンプルを採取した。分析してみたところ、300万年の間に、地磁気は78回も逆転していたことが判明した。

「かなり大きい数字になるとは思っていましたが、ここまでとは思っていませんでした」とガレ氏は言う。しかも、22回も逆転が記録されていた岩があり、実際の頻度はさらに高かった可能性が示唆された。

科学者たちはシベリアのホルブスオンカ区の断崖から岩石サンプルを採取した。岩石中の鉄分を多く含む鉱物には、約300万年分の地磁気の歴史が記録されている。(PHOTOGRAPH BY YVES GALLET)
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生物への影響は?

 現段階では、今回の研究は、答えよりも多くの新たな疑問をもたらした。当時、地球磁場の活動がそこまで激しかった理由も、さらに興味深いことに、その活動が突然落ち着いた理由もよくわからない。

 1つの可能性は、古代の地磁気の逆転が、固体である地球内核の冷却および結晶化と結びついていることである。多くの研究から、それはおそらく6〜7億年前に始まったと考えられているため、内核形成の終盤が地磁気の頻繁な逆転を引き起こしたのかもしれない。しかし、まだ不確実な点は多い。

「核とそのふるまいについて知ることは非常に難しいのです」と英リバプール大学の地質学者アンニーク・ファン・デア・ブーン氏は言う。「私たちは地球の核を見ることも、そこに行くこともできないからです」。なお氏も今回の研究には参加していない。(参考記事:「地球中心部、地球の自転より微妙に速く回転、研究」

 ほかに地磁気の逆転がこれほど頻繁に起きていたのは、エディアカラ紀にあたる5億5000万〜5億6000万年前の時期だけだ。メールト氏によると、非常に興味深いことに、ちょうどこの時期に大量絶滅が起きているという。コロコロと逆転していたこの時期の地磁気は、極端に弱かった。おそらくそのせいで、地球に登場したばかりの複雑な生命が、過酷な状況にさらされることになったのかもしれない。(参考記事:「5.7億年前、生物たちはなぜ複雑になったのか」

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