サメの歯は世界中で最もよく見つかる化石の一つだ。しかし、軟骨魚類であるサメの骨格は、めったに出てこない。かつて栄華を極めたにもかかわらず、初期のサメの多くは外見すらわかっていないのだ。
そんな古代サメの複数の頭骨とほぼ完全な骨格が、モロッコ東部の山地で発見された。10月2日付けで学術誌「英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された論文によると、今回見つかった古代サメ化石は、フェボダス(Phoebodus)属の2種のものという。
フェボダス属については3本の歯が知られている程度で、これまでほとんどわかっていなかった。今回の化石から、このサメがウナギのような体と長い鼻先を持っていたことがわかった。現在も深海を泳いでいるラブカとそっくりだった可能性が高い。(参考記事:「深海のサメ、ラブカが網にかかる、歯が300本」)
フェボダス属とラブカ属は遠い仲間にすぎないが、両者は歯もよく似ており、摂食の方法も似ていた可能性がある。
研究に参加したスイス、チューリッヒ大学のクリスチャン・クルッグ氏は「現代のサメの多くはのこぎり状の歯を持ち、獲物を細かく刻んでからのみ込みます」と話す。一方、フェボダスとラブカの歯は円すい形で、内側を向いているため、獲物を捕らえて丸のみすることしかできない。(参考記事:「恐竜時代のサメ、餌がいなくなり絶滅か、研究」)
獲物が横からやって来ても
フェボダスの化石が発見されたのは、3億7000万年前〜3億6000万年前のデボン紀後期とされる地層。当時、一帯は浅い海盆だった。水があまり循環せず、酸素濃度も低かったため、死んだサメは腐食せず、長期にわたって保存されたのだろう。(参考記事:「巨大古代サメの新種を発見、日本人研究者ら」)
クルッグ氏らはCTスキャンを用いることで、デボン紀後期の原始的なサメがどのような外見だったかを解明しようと試みた。