収集家はなぜ恐竜化石をひたすら隠すのか

個人コレクターに敵意を抱く古生物学者も

2019.10.03
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イタリア中部にある私設の展示館に飾られているカアテドクス属の恐竜。PHOTOGRAPH BY GABRIELE GALIMBERTI AND JURI DE LUCA

 大昔に絶滅した生き物の化石が飾られるのは博物館だけではない。今や、裕福なコレクターたちの自宅やオフィスにも姿を現すようになってきた。

 コレクターたちは私蔵する化石について秘密にしたがる。なぜなら古生物の化石を商品として取引することは20年にわたって激論の的になってきたからだ。売るために掘り出された「スー」と呼ばれるティラノサウルスの化石標本は、最終的にはシカゴのフィールド博物館が落札し、収蔵された。しかし840万ドル(約10億円)という価格は、一部の地主たちに一獲千金の夢を抱かせた。

 もっとも、一獲千金の夢は現実にならなかった。今やティラノサウルスの標本は市場で供給過剰になっているし、ほかの貴重な標本も値引きを続けなければ買い手がつかない。それでも中国での標本の偽造、モンゴルからの化石の不法な持ち出し、至るところで行われる不注意もしくは違法な発掘などのさまざまなスキャンダルを背景に、一部の古生物学者は個人コレクターに敵意を抱き続けている。

侮れない商業ハンターの発見

 しかし驚くべきは、個人コレクターや商業目的の化石ハンターと博物館の古生物学者が、協力関係にあることだ。これは必要から生じている面もある。世界各地の博物館は、資金不足で予算を削減してきた。そのため、商業目的の採集者が「研究者より、はるかに多く発掘している」と、スミソニアン国立自然史博物館のカーク・ジョンソン館長は言う。「研究者はひと夏に3週間ぐらいしか発掘に行けませんが、彼らは5カ月も掘り続けられます」

 化石ハンターが掘り出し、個人コレクターに売却した標本も、こうした取引がなかったとしても「必ずしも博物館に収められていた」わけではないと、米国自然史博物館の古生物学者マーク・ノレルは言う。むしろ、そうした化石は人里離れた斜面で浸食により露出し、誰にも気づかれずに、風化した可能性が高いという。

 1980年代後半から90年代にかけては素人が発掘に当たって「極めて重要な標本をたくさん台無しにした」が、それも今ではあまりなくなったとノレルは言う。米国西部では、化石ハンターが古生物学者よりも丁寧に発掘作業をすることもよくあるようだ。それは「上手に掘り出せば、値段が大幅に上がる」からだ。

 中国では、今でも素人が発掘の大半を担っている。しかしジョンソン館長によれば、どちらの国でも化石ハンターが「いくつかの本当に素晴らしい化石」を掘り出してきた。そのなかには、過去25年ほどの間に世間を驚かせた発見がいくつも含まれている。

※ナショナル ジオグラフィック10月号「恐竜化石は誰のもの?」では、裕福なコレクターたちの自宅やオフィスにも姿を現すようになってきた恐竜化石の在り方について考えます。

文=リチャード・コニフ/ジャーナリスト

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