英王子夫妻が訪問した遺産街区「ボカープ」とは?

南ア、ケープタウンの色鮮やかな街区は複雑な歴史を生き抜いてきた

2019.10.01
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南アフリカの「伝統文化継承の日」である9月24日、ケープタウンのボカープ地区では「遺産地域」となったお祝いが催された。2019年5月の指定により、300年の歴史を持つ地区の保存が後押しされることを住民たちは期待している。(PHOTOGRAPH BY SAMIR HUSSEIN, WIREIMAGE/GETTY)
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 南アフリカ共和国の大都市ケープタウンに「ボカープ」と呼ばれる地区がある。カラフルな外壁の家が立ち並び、東南アジアやインド、アフリカにルーツのある人々が混ざって暮らしていることで知られる。

 2019年9月24日の朝、明るいピンク色の家に住むシャミエラ・サモディエンさんは入念にシュークリームを仕上げ、リンゴのタルトを焼き、ティータイムに向けてテーブルの用意をした。午後には大切なお客が到着する。英国のヘンリー王子とメーガン妃だ。(参考記事:「アフリカ最南端の有名「プリン」とは?」

 この日は、南アフリカでは「伝統文化継承の日」という祝日。だが今年のボカープ地区では、様子が違っていた。5月にこの地区が、南アフリカの遺産地域に正式に指定されたからだ。つまり、歴史的な地域として保護され、新しく建物を建てる場合は、地区の様式と美観を反映することが求められる。

 ヘンリー王子とメーガン妃は、18世紀の建物が並ぶ通りを散策し、ボカープの多様な歴史に触れた。南アフリカ最古のモスクであるオウワル・モスクを見学し、シャミエラ・サモディエンさんらとお茶を共にした。英王室で初めて多文化を背景とする夫妻の訪問は、数十年前から保存を訴えてきたボカープにとって、貴重な出来事となった。

 だが、今も地区の住民たちは難しい闘いの中にある。

シャミエラ・サモディエンさんの家で、ボカープの住民たちとティータイムを共にする英国のヘンリー王子とメーガン妃。「ボカープ市民・地方税納付者協会」の会長を務めるオスマン・シャボディエンさん(左)は、地区の保存を最も声高に訴えてきた1人だ。(PHOTOGRAPH BY TOBY MELVILLE, GETTY)
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ボカープの複雑な歴史

 ボカープは、ケープタウンで最も古い住宅街だ。丘へ向かう坂に沿って、緑、ピンク、青色に塗られた1~2階建ての家が優雅に並ぶ景観がよく知られている。

 1700年代に人が住み始め、間もなく移民や貧しい労働者、そしてインドネシア、マレーシア、マダガスカル、モザンビークなどから来た解放奴隷たちが集まる土地になった。アパルトヘイトの時代、非白人の強制移住が進められた中で、ボカープは市中心部で唯一の非白人地区であり続けた。(参考記事:「史上最強の企業、英国東インド会社の恐るべき歴史」

 オスマン・シャボディエンさんは、「ボカープ市民・地方税納付者協会」(市民協会)の会長として、地区の保存を訴えることに力を注いできた。シャボディエンさんによると、かつて地区の保存について話し合いたいと思えば、窓際に見張りを置かなければならなかったという。アパルトヘイト下では、そのような集まりに参加すれば投獄される恐れがあったからだ。

次ページ:ボカープはアパルトヘイトを耐え抜いた

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