真夜中ちょうどに震える謎の磁場、火星で発見

探査機インサイトがもたらした最新の研究成果、原因は不明

2019.09.25
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 インサイトは火星の赤道近くに位置している。地球上の同じ場所で、同じ時間に、同じような現象は観測されていない。地球上で夜間に発生する磁気脈動は、高緯度の地域で起こり、オーロラに関係していると考えられている。今のところ、火星での磁気脈動の原因ははっきりしていないが、科学者は少なくともひとつの可能性を考えている。

 火星にはかつてのように全球を覆っていた強力な磁場はもう存在しないものの、太陽風と薄い大気との相互作用で弱い磁場の膜が形成されている。この膜に今度は太陽風自体の磁場がぶつかって、一部が尾のように長く吹き流される。そして、太陽から見てちょうど真裏にあたる真夜中の場所を尾が通過する際に、表面の磁場をギターの弦のように弾いているというのだ。

 火星の磁場と太陽風の相互作用を観測できるNASAのメイブン探査機が、インサイトの上空をちょうどその時間に通りかかれば、これを確認できるかもしれない。だが、今のところ答えは謎のままだ。(参考記事:「火星に謎のダスト雲と珍しいオーロラを発見」

ギャラリー:水がつくった火星の美しい風景 写真8点(写真クリックでギャラリーページへ)
火星にはかつて、多くの衝突クレーターが氷に覆われていた時代があり、周期的な気温の上昇と下降に伴ってしわやひび割れが形成された。(PHOTOGRAPH BY NASA/ JPL-CALTECH/ UNIV. OF ARIZONA)

地下に火星の海が封じ込められている?

 地下のどこかに導電層があるという話も、火星の磁気からわかったことだ。はっきりとした深さはわからず、地下100キロ以内とみられている。

 ブライン氏によると、地球の砂漠で行われた実験では、磁気探知器で地下水が発見できることが証明されているという。同様に、インサイトの磁気探知器が発見した層も、火星全体を取り巻く液体の水、あるいは氷と水を含んだ帯水層の可能性がある。(参考記事:「地下水が危機、今世紀半ば18億人に打撃」

 火星の地表に水がいつごろまで存在していたかははっきりしない。だが、現在も地下には塩を含む水があり、地殻の温度が地下へ行けば行くほど高くなるという指摘もある。他にも、地下の広範囲にわたって氷が存在するという有力な証拠があり、帯水層が地下にあると考えるのは自然なことだ。(参考記事:「火星の地下1~2mに氷の層発見、採水に便利」

 とはいえ、詳しい分析はこれからだ。これらの磁気シグナルには他の原因も考えられるため、一つひとつ可能性を排除していく必要がある。インサイトのドリルは5メートルまでしか掘れないため、帯水層説を検証するには他の方法を探さなければならない。今後の火星ミッションの課題とすべきだろう。

ギャラリー:火星に水の証拠写真 9点(写真クリックでギャラリーページへ)
火星の中緯度地方のあちこちにある浸食された崖では、地表から1~2メートルの深さに、青みがかった色をした層が帯状に見えている。スペクトルデータは、これらの層が氷でできていることを示している。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL-CALTECH, UNIVERSITY OF ARIZONA)

文=Robin George Andrews/訳=ルーバー荒井ハンナ

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