ウミガメの「ニセ卵」で密売組織を追跡できるか

絶滅の危機にあるウミガメたち、脅かす問題が後を絶たない

2019.09.28
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
特集フォトギャラリー5点(画像クリックでリンクします)
アオウミガメがバハマ諸島の波止場の近くに集まる。コロンブスの時代には、おびただしい数のウミガメがいたという。PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK

 爬虫類の違法取引の実態を調査している大学院生のヘレン・フィージーはGPS発信器を仕込んだ模型の卵をポケットに忍ばせ、産卵のためにコスタリカの海岸に上陸したカメを探していた。フィージーは産卵の開始を見計らい、カメの背後からはって巣穴に近づき、産み落とされた卵の山に模型の卵を混ぜた。卵を盗みにきた連中が本物と一緒に持ち去るように。

 ウミガメの卵はアジアと中南米の一部地域ではよく売れる。スープに入れたり、オムレツにしたり、生のままトマトジュースに混ぜて飲んだりする。

 ほとんどの国では、何年も前からウミガメの卵の販売が禁止されているが、密売は後を絶たない。その背景には、しばしば貧困や薬物・アルコール乱用があるとフィージーは言う。模型の卵を追跡すれば、密売組織の拠点を突きとめられるかもしれない。

 ある土曜日、コスタリカ北西部のグアナカステ州に近い海岸で、密漁者が28カ所の巣穴から、模型の卵を含む多数の卵を盗んだ。月曜の午前7時、フィージーはスマートフォンのアプリで卵の行方を追った。卵はとあるビルの裏手を経て、海岸から140キロほど内陸に入ったサンラモン市内に運ばれた。スーパーマーケットの荷降ろし場で別の運び手に引き渡され、誰かの家に運ばれたようだ。

ウミガメを脅かす問題

 模型の卵が密売防止に一定の効果を上げたとしても、ウミガメを脅かす問題はほかにも数多くある。カメが産卵する海岸は、高層ビルやホテルが立ち並び、分譲地として売り出されてもいる。建物や街灯のまばゆい明かりは、カメの方向感覚を狂わせ、道路に迷い出て、車にはねられるカメもいる。沿岸部には、有毒物質からプラスチックごみまで、さまざまな汚染物質が漂着している。プラスチックのストローやフォークをカメが吸い込んだり、腹をすかしたオサガメがビニール袋をクラゲと間違えて食べてしまうこともある。

 ウミガメ製品の取引は1970年代にワシントン条約の規制対象になったが、取り締まりは万全ではない。2012年の調査で、タイマイの甲羅を加工した大量のべっ甲材料が日本と中国で販売されていることがわかった。確実なデータはないが、繁殖力のある雌のタイマイは今では世界中に6万〜8万頭しか残っていないと、専門家はみている。

 車のタイヤくらいの大きさしかないケンプヒメウミガメから、ホッキョクグマよりも重いオサガメまで、7種のウミガメのうち、6種がレッドリストの危急種か絶滅危惧種、近絶滅種に指定されている。残る1種、オーストラリア近海にすむヒラタウミガメの状況はわかっていない。

※ナショナル ジオグラフィック10月号「大海原で生き続ける」では、1億年以上も海で命をつないできたウミガメに降りかかる危機についてレポートします。

文=クレイグ・ウェルチ/英語版編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加