85%の精度で予想
デニソワ人の存在が最初に報告されたのは2010年のこと。シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟から出土した1本の小指の骨と1本の大きな歯から抽出されたDNAが決め手となった。
「DNAのみに基づいて新種の人類が発見されたのは、科学の歴史上初めてでした」とカーメル氏は言う。「新種と同定されたものの、その姿は謎に包まれていました」
その後の遺伝学的研究から、デニソワ人の姿が徐々に見えてきた。デニソワ人は少なくとも40万年前にはネアンデルタール人から分岐していて、ネアンデルタール人がヨーロッパと中東に定着したのに対し、デニソワ人は東に進んでアジアまで来た。途中、デニソワ人は現生人類の祖先と交雑し、その遺伝子の特徴は今でもアジア系集団に残っている。(参考記事:「少女の両親は、ネアンデルタール人とデニソワ人」)
古人類学者は伝統的に、化石骨格を利用して古代ヒト族を分類してきた。しかし、デニソワ人の化石はなかなか見つからず、その姿を復元できずにいた。
そこでカーメル氏らの出番となった。DNAは、身体的特徴を決定するタンパク質の設計図のようなものだ。しかし、この設計図は本のように単純に読むわけにはいかず、どの文字の連なりがどのタンパク質に対応していて、個々の遺伝子がどのくらい活性化しているかがわかっていないと読み解くことができない。
進化の過程で遺伝子の活性が抑えられる場合があるが、その方法の1つが、DNAの特定の場所にメチル基のタグをつける「メチル化」である。例えば、ゲノムの特定の場所に付いていたメチル基が失われると、さまざまな種類のがん細胞がいっせいに成長を始めることがある。
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