「人新世」が動物たちを追い詰める

人間を中心とする時代がもたらしてしまうものとは

2019.09.27
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ハイイロウーリーモンキー(絶滅危惧種)
ペットとして育てられ、栄養失調になった幼い雌。子を捕まえるときに、母親は殺された可能性が高い。ブラジル当局が救出したものの、一生飼育下に置かれることになる。ブラジル環境・再生可能天然資源院 野生動物検査センター PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE

 国際自然保護連合(IUCN)の調査では、絶滅寸前にある哺乳類は、亜種を含め200種以上にのぼる。絶滅の発生頻度はおそらく過去の数百、いや数千倍になるだろう。その頻度があまりに高いことから、今は大量絶滅が起こる寸前にあると専門家は言う。

 約6600万年前に恐竜を死滅させた大量絶滅は、小惑星の衝突後に発生した。一方、現在進行中の絶滅の原因はもっと複雑で、森林伐採や密猟、病原体のまん延、気候変動、魚類の乱獲、海洋の酸性化などが混在している。

 だが、こうした原因を突き詰めていくと、問題の発端は一つであることがわかる。今や世界は人間を中心とする時代、「人新世」に突入したのだと、多くの科学者が主張している。つまり、かつての小惑星の役割を演じているのは、私たち人間なのだ。

私たちは普通ではない時代に生きている

 この記事の写真を手がけた写真家ジョエル・サートレイはこの13年間、絶滅から動物を守るプロジェクト「フォト・アーク」に取り組み、さまざまな生き物を撮影してきた。絶滅する種が増え続ける今、動物園や特殊な施設で飼育されているのはそれぞれの種の数少ない生き残りであり、場合によっては唯一の個体群であることもある。

 生物の絶滅が頻繁に起きていると、逆にそうした現状に慣れてしまい、事実に対して鈍感になってしまうこともある。だからこそ、サートレイの写真が必要なのだ。彼の写真は、失われつつある個々の生き物たちが、いかにかけがえのないものであるかを教えてくれる。

 私たちは普通ではない時代に生きている。取り返しがつかなくなる前に、できる限りのことをして、この多様性に富んだ生命の世界を守らなくてはならない。新たな時代を創り出すために、まずはその事実を見つめ、認識することから始めてみよう。

※ナショナル ジオグラフィック10月号「消えゆく生命のポートレート」では、絶滅の脅威にさらされる動物たちを写真家、ジョエル・サートレイが写し出します。

文=エリザベス・コルバート/ジャーナリスト

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