解説:インド初の月着陸機が寸前に沈黙、成否不明

月の上空2.1kmで交信途絶、周回機は観測を継続、チャンドラヤーン2号

2019.09.10
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2019年7月22日、GSLV MkIII-M1ロケットに搭載されたインドの月探査機「チャンドラヤーン2号」が月に向けて飛び立った。着陸機「ビクラム」は9月6日、前例のないほど南寄りの地点への着陸を試みたが…。(PHOTOGRAPH BY ISRO)
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 インドが挑戦した、月の南極地域に探査機を軟着陸させる世界初の試みは、つらい静寂の中で終幕を迎えた。着陸の直前、「チャンドラヤーン2号」に搭載されていた着陸機「ビクラム」と管制センターとの交信が途絶えたのだ。インド宇宙研究機関(ISRO)によると、着陸機が月面の上空約2.1キロに達したところで、地球への信号が送られてこなくなったという。

「ビクラムの降下は計画通りで、高度2.1キロまでは普通に動いていたことが確認されています」。ISROのシバン長官は、交信途絶の約30分後にそう発表した。現在、データを詳しく分析中だという。

 今回の計画が成功すれば、インドは月面への軟着陸を成し遂げた世界で4番目の国、そしてロボット探査車を月面で稼働させた世界で3番目の国となるはずだった。着陸の成否はまだ判明していないが、それでもチャンドラヤーン2号の周回機は今も月軌道を順調に周回しており、これからの1年間でさまざまなミッションをこなす予定だ。(参考記事:「「月の南極」初探査へ、インド宇宙開発のねらいは」

「わが国の科学者たちはインドの誇りです。彼らは最善を尽くし、常にインドの誇りとなってきました」。シバン氏からの状況報告の後、インドのナレンドラ・モディ首相は、ツイッター上でそう発言している。

 宇宙の旅のすべてがそうであるように、ビクラムの飛行にも危険が伴っていた。ほぼ静止状態にまでスピードを落としつつ、月面の障害物を自動でスキャンし、それらを避ける手順を踏みながら着陸する必要があった。月面へ探査機を自律的に着陸させる試みは、その大半が発射途中あるいは着陸中に失敗している。

「月周回軌道への投入は成功しましたが、着陸は恐ろしく困難なものになります」。8月に開かれた記者会見で、シバン氏はそう述べていた。

 ビクラムの降下前に行われた取材において、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の惑星科学者、ダナ・ハーレイ氏は、世界中の惑星科学者は、宇宙船が着陸するときには例外なく不安にかられるものだと語っている。彼らはどんな困難が待ち受けているかを知りすぎているからだ。

「わたしたちはいつもワクワクすると同時に不安にもなります。これがどんなに難しいことかがよくわかっていますから。着陸は一筋縄ではいきません」

【参考動画】月入門
月は何でできていて、どんな風に形成されたのか。月の基礎知識について学ぼう。(解説は英語です)

次ページ:なぜ月の南極なのか

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