人類の北米到達、定説覆す新証拠 アイダホ州の遺跡

アメリカ大陸最古級の石器、日本の石器との類似点も

2019.09.06
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クーパーズ・フェリーの発掘調査で、1万5000~1万6000年前にさかのぼる遺物が出土している。従来、人類がアメリカ大陸に到達したと考えられていた年代より数千年古い。(PHOTOGRAPH BY LOREN DAVIS)
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 米アイダホ州西部の遺跡が、南北アメリカ大陸で最古の部類に入るとの研究結果が、8月30日付けの科学誌「サイエンス」に掲載された。

 遺跡は、「クーパーズ・フェリー」と呼ばれる。放射性炭素年代測定によると、ここで人々が道具を作ったり、動物を解体したりしていたのは1万5000年~1万6000年前。近年、アメリカ大陸への人類移住の時期やルートに関しては、従来の定説を覆す遺跡がいくつか見つかっているが、クーパーズ・フェリーもその重要な例として加わることになった。

これまでの筋書き

 20~30年前までは、おおむね1万3000年前のクロービス石器が、アメリカ大陸で最初の人類による技術だと考えられていた。いわゆる「クロービス・ファースト」仮説だ。この石器を作った人々は、かつてシベリアとアラスカを結んでいた陸地、ベーリング陸橋を渡り、アジアから徒歩でやってきて初めて北米に入ったと、多くの研究者が考えていた。北米の内陸部を覆っていた広大な氷床がおよそ1万4000年前に後退し始め、氷の消えた回廊地帯(無氷回廊)が現れ、そのルート沿いに南下してきたというものだ。(参考記事:「米先住民の起源はアジア、DNA分析」

 これが一般的に言われる筋書きだった。アメリカ大陸各地で、クロービスよりも古い遺物が見つかり始めるまでは。

「先クロービス」時代のものとされている遺跡は数十カ所ある。しかし、年代が正確にわかっているのは今のところ数えるほどしかないと、米ワシントン大学名誉教授で考古学者のドナルド・グレイソン氏は言う。チリのモンテベルデ(約1万4500年前)、米テキサス州のフリードキンおよびゴールト遺跡(それぞれ1万5500年前と1万6000年前)、米オレゴン州のペイズリー洞窟遺跡(約1万4000年前)などがそうだ。ここに、クーパーズ・フェリーが加わることになりそうだ。(参考記事:「北米最初の人類に新たな証拠、マストドン狩猟も」

「私の見るところ、クーパーズ・フェリーは極めて説得力のある先クロービス遺跡です」。今回の研究に関わっていないグレイソン氏は、こう評価している。

 米サンディエゴ州立大学の考古学者で、今回の論文を査読したトッド・ブレジー氏も同様に、この遺跡は「『クロービス・ファースト』のモデルはもう成り立たない」ことを示す、さらなる証拠だと話す。

次ページ:出土品の年代が続々判明

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