珍獣カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)が、想定以上に減っているらしいとする論文が、7月19日付け学術誌「Global Ecology and Conservation」に発表された。
カモノハシは、アヒルのようなくちばしと水かきの付いた足をもつ奇妙な哺乳類で、オーストラリア東部とタスマニア島の川に生息し、同国で最も愛されている動物の1つだ。(参考記事:「動物大図鑑 カモノハシ」)
カモノハシは環境の変化に強いと考えられてきた。オーストラリアの動物たちの多くが減少したり絶滅しているなかで、カモノハシは相変わらず目撃される機会が多かったからだ。ところが近年になって、カモノハシは長らく、良くない状態に置かれていたことがわかってきた。(参考記事:「島のネズミが絶滅、原因は気候変動、哺乳類で初」)
「カモノハシは私たちの目の前で減少し続けていたのです」と、今回の論文の著者ターニール・ホーク氏は言う。ホーク氏は、オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の博士課程の学生で、カモノハシ保全イニシアチブの研究員。「オーストラリアにはカモノハシの広大な生息域があります。けれども私たちは、そこに本当にカモノハシがいるのか、いるとしたら何匹なのかを知りません」
研究チームはカモノハシについて数世紀分の目撃データを調査した結果、生息地の喪失や狩猟、気候の変化により、カモノハシの個体数が急激に減少しているようだと、今回の論文で報告した。
見過ごされてきた減少
1980年代からカモノハシの減少に警鐘を鳴らす研究者はいたが、人々が耳を傾けることはなかった。データが集まりだしたのはその後、長期監視プログラムが始まってからだ。「私たちは1995年からカモノハシのモニタリングをしていますが、明らかに減少しています」と、水道公社メルボルン・ウォーターの環境水資源プランナーであるティアナ・プレストン氏は話す。
カモノハシの再評価を行った国際自然保護連合(IUCN)は、ヨーロッパ人が到来する17世紀以降、個体数が全体で約30%減少したと見積もり、2016年にレッドリストでの分類を近危急種(near threatened)に引き上げた。
今回の論文の共著者であるニューサウスウェールズ大学のリサーチフェロー、ギラッド・ビノ氏は、この見積もりすらまだ手ぬるいと考えている。「もともとの基準となる個体数の見積もりが間違っている可能性があります。実際には個体数が半減したか、あるいはもっと減っていると聞いても、私は驚かないでしょう」
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