アマゾンで猛威を振るう森林火災のニュースが先週から世界中を駆け巡っている。だが、アマゾンの熱帯雨林の重要性を伝える際に、誤解を招く主張が何度も繰り返された。それは、地球の酸素の20%をアマゾンが生み出しているというものだ。
この主張は米CNN、米ABCニュース、英スカイニュースなどの報道で取り上げられたほか、フランスのマクロン大統領や、米上院議員で2020年の大統領選に出馬表明しているカマラ・ハリス氏、俳優で環境保護活動家でもあるレオナルド・ディカプリオ氏など、政治家や著名人のSNSでも散見された。また、アマゾンの森林は「地球の肺」という表現も、同じようによく使われている。
アマゾンの火災によって世界の酸素供給が危機にさらされるとまで考える人もいた。元宇宙飛行士のスコット・ケリー氏は先週、「生き残るためにはO2が必要です!」とツイートした。
だが、この20%という数字は、まったくの過大評価だ。むしろ、ここ数日で複数の科学者が指摘したように、人間が呼吸する酸素に対するアマゾンの純貢献量は、ほぼゼロと考えられる。
「アマゾンを保護すべき理由はたくさんありますが、酸素を理由にするのは的外れです」と米マサチューセッツ州にあるウッズホール研究センターでアマゾン・プログラムの指揮をとる地球システム科学者マイケル・コー氏は述べる。(参考記事:「アマゾン森林火災、原因は「過剰な伐採」と専門家」)
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