解説:380万年前の猿人、人類史をこう書き換える

画期的な発見、新しくなる人類の進化史を解説

2019.08.31
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 アファール猿人は科学者が「ルーシー」と呼ぶ個体が特に有名で、それ以前の霊長類よりも大きい脳をもち、二足歩行が可能で、多種多様なものを食べられる強い顎をもっていた。アファール猿人が最盛期を迎えた350万年前頃、気候変動により東アフリカの気温が低下し、乾燥が進んで、彼らが暮らした森林は縮小していった。やがて、アファール猿人やその後継者たちは、より開けた、多様な環境を利用するように進化していった。(参考記事:「猿人ルーシーの死因は木から転落? 注目の理由は」

参考ギャラリー:眠りから覚めた謎の人類ホモ・ナレディ 写真9点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:眠りから覚めた謎の人類ホモ・ナレディ 写真9点(画像クリックでギャラリーへ)
ホモ属(ヒト属)の新種と考えられるホモ・ナレディの復元模型。古生物を専門とする造形作家のジョン・ガーチーが、シリコンで作った。 PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NGM STAFF

 しかし、こうした特徴をもつ生物はアファール猿人が最初ではなかった。1995年、科学者たちは、より古いアウストラロピテクス属で、アファール猿人の祖先かもしれないアナメンシス猿人を記載した。しかし、アナメンシス猿人はいつになっても謎の人類のままだった。数本の歯と顎の破片しか見つかっていなかったからだ。米シカゴ大学の古人類学者ゼレイ・アレムゼゲド氏は、「アファール猿人の頭蓋骨はたくさん見つかっていたのですが、もっと古いアウストラロピテクス属の顔はわかりませんでした」と言う。なお、氏は今回の研究には関わっていない。

 それが見えてきたきっかけは、2016年2月10日、エチオピアのアリ・ベレイノさんによる偶然の発見だった。

研究者は飛び跳ねて喜んだ

 当時、ハイレ=セラシエ氏が共同で率いる遠征隊がエチオピアのアファール地域のウォランソ=ミルで発掘作業を行っていて、ベレイノさんはそこから4キロほど離れた所でヤギを飼っていた。ハイレ=セラシエ氏によると、ベレイノさんは何年も前から彼のチームに雇ってもらいたがっていた。彼はときどき侵食された岩の中から化石が出ていると言ってきたが、ハイレ=セラシエ氏が過去にその場所を訪れたときには何も見つからなかったという。

 その日、ヤギの囲いを広げようとして地面を掘っていたベレイノさんは、砂岩の表面から骨が露出しているのを見つけた。ベレイノさんは地元の役人に声をかけ、その役人もハイレ=セラシエ氏が興味をもつだろうと確信した。

 役人はハイレ=セラシエ氏のキャンプに連絡したが、まだ疑っていたハイレ=セラシエ氏は、化石を見つけた場所に印をつけてキャンプまで来るようにベレイノさんに伝えてほしいとだけ返事をした。役人がベレイノさんを連れて行くと、ハイレ=セラシエ氏はすぐに発見の大きさに気がついた。ベレイノさんが見つけたのは古代のヒト族の上顎骨だった。

 ハイレ=セラシエ氏は現場での作業を中断し、ベレイノさんのヤギの囲いまで歩いていった。そして、ベレイノさんが上顎骨を発見した場所からほんの数十センチのところで、今度はハイレ=セラシエ氏が頭蓋骨の残りの部分のほとんどを見つけた。「その場でぴょんぴょん飛び跳ねました」とハイレ=セラシエ氏は言う。「私のそんな様子を見た役人は、地元の友人たちに、『先生はどうしたんだ? おかしくなったのか?』と言っていましたよ」

 上顎骨と残りの骨がぴったり合うことを確認したハイレ=セラシエ氏は、化石をキャンプに持ち帰った。ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の古生物学者で、遠征隊のメンバーである論文共著者のステファニー・メリロ氏は、「あんなに幸せそうな彼を見たのは初めてでした」と言う。「言葉も出ないほどで、手は震えていました」

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