特集フォトギャラリー5点(画像クリックでリンクします)
イタリアのサルデーニャ島にあるオッターナ村で謝肉祭が開かれ、仮面を着けた村人が練り歩く。人間が動物の主人であることを示すこうした風習は、牧畜が始まった時代から受け継がれてきた。PHOTOGRAPH BY RÉMI BÉNALI

 ヨーロッパ人とは実際のところ何者で、どこから来たのだろうか?

 科学は今、新たな答えを導き出そうとしている。それは、ヨーロッパ大陸は氷河時代から人種のるつぼだった、というものだ。現在のヨーロッパ人は、アフリカ、中東、そしてロシアの草原地帯から移住してきた祖先の遺伝子をさまざまな割合で受け継いでいる。それを裏づけているのが、考古学的な遺物や、古い人骨や歯の解析、そして言語の系統研究だ。

 なかでも、先史時代の人々のDNAを分析する新しい分野、古遺伝学の成果は大きい。この10年ほどで、何万年も前に生きていた人のゲノム(全遺伝情報)を解読できるようになった。ここ数年は技術がさらに進歩し、今では、保存状態の良い骨の破片があれば、わずか5万円ほどでゲノムを解読できる。

 得られる情報が飛躍的に増えたことで、考古学は今、大きく変わろうとしている。2018年だけでも、1000を超える先史時代のヒトゲノムが解読された。その大半は、何年も前に発掘され、博物館や考古学研究所に保管されていた骨から抽出されたものだ。

 わずか40ミリグラム足らずの骨や歯から、髪や目の色、牛乳を消化する酵素の有無など、さまざまなことがわかる。そうした解析により、彼らの祖先が何者で、どこから来たのか、ひいては先史時代の人類の移動ルートを明らかにすることができるのだ。

大移動、3つの波

 今では、主に3波にわたる大移動が、先史時代のヨーロッパを形づくったことがわかってきた。ヨーロッパに流入した移住者たちは、農耕や都市、家畜化された馬、車輪をもたらした。

 彼らはまた、現在ヨーロッパ大陸の多くの地域で使用されているインド・ヨーロッパ語族の言語をもたらし、さらにはペスト菌を持ち込んだ可能性もある。現在の西ヨーロッパと中央ヨーロッパに住む人々の遺伝的組成に大きく寄与した最後の集団は、ロシアの草原地帯から移動してきた人々だった。

 科学が示しているのは、ヨーロッパは今も昔も移民の大陸であるということだ。「ある場所に今住んでいるからといって、祖先たちがはるか昔からそこに住んでいたわけではありません」と、古遺伝学者のデビッド・ライヒは語る。

「(ヨーロッパには)先住民などいません。自分たちの純粋なルーツを見いだそうとしても、そうした概念が無意味であることに気づかされるはずです」と、ライヒは続けた。

※ナショナル ジオグラフィック8月号「ヨーロッパ人はどこから?」では、先史時代の人々の遺骨から採取したDNAの解析により、人種のるつぼであることがわかってきたヨーロッパのルーツに迫ります。

文=アンドリュー・カリー/ジャーナリスト