センザンコウは、世界で唯一ウロコを持つ哺乳類であり、世界で最も密売されている哺乳類でもある。アジアやアフリカで横行する密猟の主な目当ては、中国の伝統薬に使われるウロコ。調査によると毎年、数十万匹が殺されているという。(参考記事:「こんなに愛らしい、希少な哺乳類センザンコウ」)
しかし、センザンコウが狙われる理由はウロコだけではなく、需要の中心もアジアだけとは限らないとする論文が、学術誌「Conservation Science and Practice」に発表された。米国は2000年までセンザンコウの皮の主要な輸入国であり、その風変わりな皮がカウボーイブーツやベルト、財布に加工されていた。
2017年、センザンコウ全8種の国際取引が禁止された。論文によると、センザンコウの流通が途絶えてから、米国の輸入業者は、代替としてアマゾン川に生息する魚ピラルクーの皮を使い始めたという。ピラルクーは体長3メートルにもなる巨大魚だ。この2種は生物学的にはまったく異なるが、どちらもその皮をなめすと似たような菱形模様になる。
ピラルクーの乱獲は、すでにアマゾン川流域で重大な問題となっているが、センザンコウの代替品としての需要が野放しにされると、より一層深刻になるだろうと論文の著者は警告している。(参考記事:「ピラルクーの新種を「発見」、複数存在か」)
「米国で昔からセンザンコウの人気が非常に高かったことを考えると、ピラルクーの市場は大きいと考えられます」と論文の筆頭著者であるオーストラリア、アデレード大学の研究者サラ・ハインリッヒ氏は話す。「ピラルクーの取引は、すぐに抑えきれなくなるかもしれません」
これまで、センザンコウの皮取引と生息数減少の関係は、あまり問題視されてこなかった。しかし、センザンコウの専門家である英オックスフォード大学の博士研究員ダン・チャレンダー氏は、「皮の取引がセンザンコウにとっての脅威だったことは確かです」と指摘する。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。(参考記事:「1.3億円相当、センザンコウのウロコ4トン押収」)
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