雄大な氷河、きらめく湖、ふつふつと湧き出る温泉で有名な北大西洋の島国アイスランドは、火山活動が活発なことでも知られている。そのアイスランドで、過去の火山の噴火に際し、マグマが記録的な速さで上昇していたことが明らかになった。(参考記事:「アイスランドの絶景」)
調べた火山は、7000年~1万500年前に噴火したボルガルフロインだ。その噴火の残留物を調べたところ、地殻とマントルの境界付近から地表までの24キロを、わずか10日でマグマが駆け抜けていた。この研究結果は6月24日付で科学誌「Nature Geosience」に発表された。
10日で24キロは、それほど速そうに思えないかもしれない。厳密に言えば、最も速く地殻を貫通するマグマは「キンバーライトマグマ」で、時速100キロを超えるという。だが、これが最後に噴出したのはおよそ6000万年前で、非常に特殊なマグマだ。ちなみに、キンバーライトマグマはダイヤモンドを墨に変えずに地表近くまで運ぶとされている。(参考記事:「ダイヤモンド入りマグマ、ガスで上昇?」)
今回の記録は、世界中どこにでもある火山のマグマとしては、知られている限り最速のレベルだという。したがって、このマグマを研究すれば、似たような火山の噴火を事前に予知できるようになるかもしれない。(参考記事:「予知できる噴火、できない噴火」)
「火山は一つひとつ異なる歴史を持ち、性格もそれぞれ違います」。大英自然史博物館の火成岩岩石学者キアラ・ペトローネ氏は言う。しかし、サッカーの試合中に選手が各自違う動きをしていても全員同じ基本ルールに従っているのと同様に、ボルガルフロインの噴火が少しばかり変わったものだったとしても、その歴史を紐解けば、これから噴火する他の火山を理解するのに役立つかもしれない。なお、ペトローネ氏は今回の研究には参加していない。