【動画】ホホジロザメを食べるシャチ、狙いは肝臓

「メスを使って手術するかのように、肝臓を摘出していた」と研究者

2019.08.13
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シャチがエイを尾でノックアウト
メキシコの海で撮影された珍しい映像。シャチたちがエイをもてあそんでいる。エイは命を落としたが、シャチは食べなかった。(解説は英語です)

狙いはおいしい肝臓

 南アフリカ、ケープタウンにあるケープ研究センターの海洋生物学者アリソン・コック氏はすでに、複数のエビスザメを襲い、肝臓を食べていた2頭のシャチを研究していた。エビスザメはフォールス湾の藻場に生息する種だ。

 2頭のシャチはそれぞれ「ポート」「スターボード」と名付けられた。左舷と右舷を意味する言葉で、背びれがそれぞれ左と右に傾いていたことに由来する。 (参考記事:「全身が白いシャチ、北太平洋で発見」

 2017年、ホホジロザメの死骸が打ち上げられたとき、コック氏らはポートとスターボードを疑った。死骸を解剖したところ、左右の胸びれの間に驚くほどきれいな裂け目があったことを除き、ほぼ無傷だった。おそらく2頭のシャチは肝臓の位置を正確に知っていて、傷口から吸い取ったのだろう。

 エビスザメの死骸とホホジロザメの死骸の間に類似点があったことから、ポートとスターボードに違いないとコック氏らは確信した。1997年、ホエールウォッチングに参加していた人が撮影した映像も、ポートとスターボードが力を合わせ、ホホジロザメを仕留めた可能性を示唆している。

 シュルマン・ジャニガー氏は次のように述べている。「まるで2頭のシャチが技術を磨き上げ、科学的な手法で肝臓を摘出したように見えます。メスを使った手術に近いレベルです」

 シュルマン・ジャニガー氏はさらに、「詳細な研究を行う素晴らしい機会に恵まれました。特に、死骸を調べることができたのは貴重な体験です。(1997年には)できていませんでしたから」と喜んでいる。

 シャチたちが肝臓を狙ったのはおそらく、高脂肪でおいしいためだろう。アンダーソン氏はTV番組で、「人がバターやベーコンを食べるのと同じです。私たちは脂ぎった食べ物が好きなのです」と解説している。

 しかも、浮力の維持に使われているホホジロザメの肝臓はかなりのボリュームがある。最大なら270キロもある塊だ。

 カリフォルニア州のシャチに比べると、南アフリカのシャチはあまり研究されていない。プレトリア大学でクジラとイルカを研究する生物学者のサイモン・エルウェン氏によれば、南アフリカでは、人がシャチと遭遇することはめったにないという。(参考記事:「新種?「タイプD」のシャチ、初の水中映像」

 エルウェン氏は番組のなかで、「シャチはたいてい、大陸棚や深海にいます」と話す。「写真やタグを使って研究している人がいないため、私たちは個々のシャチに詳しくありません」

 ポートとスターボードは2019年現在、クロヘリジロザメという、新たな種を標的にし始めている。

 今回、エルウィン氏らは捕食の瞬間を観察することに成功し、片方のシャチから小さな肉片を試料として採取した。シャチの食性や遺伝情報など、さまざまな疑問を解決できるかもしれないと、エルウィン氏は期待している。

文=EMMA RIGNEY/訳=米井香織

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