動物たちが周囲の世界をどう感じ取っているかは、いまだに謎が多い。高度な社会性をもつヤギも同様だ。
ヤギはYoutubeでも人気者で、かわいらしくて笑える動画がいくつも投稿され、再生回数は数百万回に上る。表現力豊かで社交的な彼らを、擬人化したくなる気持ちはわかるが、実際どうなのかはほとんど解明されていなかった。(参考記事:「【動画】電線ぶらり、ドア破壊、ヤギの奇妙な行動」)
学術誌「Frontiers in Zoology」に7月10日付けで掲載された新たな研究によると、ヤギはほかのヤギが喜んでいるか不機嫌かを、声を聞いて判別できるという。つまり、ヤギは仲間の気持ちがわかるということだ。今回の発見は将来、飼育されているヤギの扱いに影響してくる可能性もある。
「最も基本的なレベルで、ヤギは周囲の環境を認識している」ことが示されたと、論文の筆頭著者であるルイージ・バシャドンナ氏は話す。「人間以外で仲間の感情を感じ取れる動物という点で、ヤギはウマ、霊長類、ヒツジなどと共通しているのです」。同氏は英ロンドン大学クイーン・メアリー校で博士課程修了後の研究助手を務める。(参考記事:「「笑い声」で明るい感情が伝染、NZの希少オウム」)
今回の実験を行った研究者たちは、ヤギが声を通じて感情を表現できることを以前に発表していた。今回はより大きな研究チームで、ヤギがほかの個体の感情を判別できるかを探ることにした。「感情が他者に与える効果を実際に調べなければ、社会性の大きな側面を見落としてしまいます」と、バシャドンナ氏。
実験では、英ケント州の保護施設で飼われている24匹のヤギを対象とした。この施設は、世話を放棄されたり、虐待されたりしたヤギを保護している。
鳴き声の聞き分けテスト
研究チームは、ヤギが喜んでいるときの鳴き声(餌が運ばれてきたとき)、軽い不満を表しているとき(群れから5分間引き離されたときと、自分は食べられない状態で、ほかのヤギが餌を食べているのを見ているとき)の鳴き声を録音した。(参考記事:「超音波でしゃべるネズミの会話、スロー再生で解読」)
次にその声を、心拍数モニタを装着した別のヤギに聞かせた。その結果、声の性質が変化したときにヤギが強く注意を向けることがわかり、違いに気付けることをうかがわせた。また、喜んでいる声を聞くと、心拍と心拍の間隔の変動(心拍変動)が大きくなるという相関がみられた。哺乳類にとって心拍変動が大きいのは、満足した状態にあるサインだ。
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