タム山塊の近くにある一回り小さなオリ山塊には、磁気のバーコード模様がはっきりと描かれ、マグマが海嶺から噴き出して形成されたことを示唆している。

 一方、タム山塊の磁気記録に関するデータは十分ではなかったが、2013年の論文が注目されたおかげで、セーガー氏はさらに詳しく調査する資金援助を民間から受けた。そして、タム山塊の磁気記録に関するこれまでにない精密な地図を作成した。すると、中心付近の模様に地殻変動によるゆがみは見られるものの、縞模様は確かに存在した。

 つまり、タム山塊は単一の火山ではなく、海嶺のように、海洋の地殻が大量に集積した場所ということになる。地殻の厚さは30キロメートルで、世界平均の4倍だ。なぜこのような地形になったのかは定かではないが、タム山塊における地殻形成の速さは驚異的だ。

 シャツキー海台も、全体的に同じ縞模様に覆われている。ということは、海台自体が海底の洪水玄武岩でも、マントルプルームによってできたものでもなく、セーガー氏の言う大規模な海洋底の拡大によるものと考えられる。

 2013年の論文は、今振り返ってみると、一握りの地震データとサンプルだけに基づいており、まるで「一本の歯と大腿骨だけで新しい恐竜を再現しようとしていたよう」だったと、セーガー氏は語った。

「別の惑星の火山を調べる方が楽」

 NOAAのチャドウィック氏は、2013年の論文には完全に納得していなかったが、最新論文の磁気データは信頼性が高く、著者たちは正しい方向へ向かっているようだと評価する。

 米ハワイ大学マノア校の地球化学者で火山学者のケン・ルービン氏は、最新論文にもまだ満足していない。盾状火山モデルや改善された海嶺火山活動モデル、その他同様のモデルを検証するためのしっかりしたデータはいまだにほとんどないとしている。

 だが、質の良いデータを集めるのはそう簡単なことではない。陸上の山と違って、海底火山の場合、調査は困難を極める。直接歩いて行ってサンプルを採取するわけにはいかないのだ。そのため、多くは間接的な観測に頼らざるを得ない。そもそも、海底火山を発見すること自体が難しく、いまだ発見すらされていない海底火山も多い。

「この地球にある海の底の火山よりも、別の惑星の火山を調べる方が楽なんです」と、米スミソニアン協会世界火山活動プログラムのジェニーン・クリップナー氏は言う。(参考記事:「金星で複数の火山が噴火、探査機が間近で初観測」

 溶岩の流れの性質や分布、発生源についてより多くを知り、地球物理学的な画像をさらに集めて地下構造を解き明かさなければ、タム山塊やシャツキー海台の誕生の秘密はいつまでも推測の域を出ないと、ルービン氏は考えている。

 したがって、今のところはハワイのマウナロアが世界最大の火山に返り咲いたことになる。

ギャラリー:大迫力、空から至近距離で撮ったハワイの溶岩 10点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:大迫力、空から至近距離で撮ったハワイの溶岩 10点(写真クリックでギャラリーページへ)
米国ハワイ島、キラウエア火山から流れる溶岩流。ドローンを使って撮影した。(PHOTOGRAPH BY EREZ MAROM)

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