なぜ世界最大の火山とされたのか

 タム山塊は、太平洋北西部に位置するシャツキー海台(かいだい)の上にある。「タム」山塊の名付け親であるセーガー氏は、ここがそう呼ばれるようになるはるか以前から25年以上の長きにわたって、タム山塊の研究を続けている。

 一説では、海の台地である海台は、比較的短期間に大量の溶岩が噴出してできた洪水玄武岩の海底版と考えられている。洪水玄武岩とは、地下にあるマントル物質が超高温のプルームとなって地殻まで上昇するために、玄武岩質の溶岩が洪水のように一気にあふれ出る現象だ。これは陸地でも海底でも見られる。(参考記事:「三畳紀末の大量絶滅、原因は溶岩の噴出」

 1990年代、セーガー氏のものも含めて複数の論文が、このマントルプルームモデルによってシャツキー海台とタム山塊が形成されたという説を解説し、支持した。2009年、セーガー氏は国際深海科学掘削計画(IODP)と協力してタム山塊の複数個所を掘削し、流れた溶岩が固まった跡を発見した。その厚さは23メートルに達するところもあった。そのため、タム山塊は大量の溶岩の噴出によってできたと考えられた。(参考記事:「“失われた大陸”ジーランディアの試料採取に成功」

 また、地震波を利用した観測でも、溶岩が1カ所だけから流れ出ていることが示され、タム山塊はやはり孤立した巨大な盾状火山であるように研究チームには見えた。盾状火山とは、流動性の高い溶岩が噴出して広範囲に広がり、盾を伏せたような形になる傾斜のゆるい火山だ。そうであれば、タム山塊は世界最大の盾状火山ということになる。当時は非常に魅力的な説として「Nature Geoscience」に受け入れられたと、セイガー氏は振り返る。(参考記事:「【動画】キラウエア火山が見せた炎のショー」

ギャラリー:この世の果て? 地獄のような絶景写真12点(写真クリックでギャラリーページへ)
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「地獄の門」は、天然ガスが燃え続ける大穴。数十年前から燃え続けている。(PHOTOGRAPH BY GEORGE KOUROUNIS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「何か引っかかるものがありました」

 2013年に発表された論文は大きな話題を呼んだが、「何か引っかかるものがありました」と、セイガー氏は振り返る。それは、地球の磁場に関することだった。

 タム山塊は、3つの海嶺(海底の山脈)が出会う場所に位置している。いくつもの火山がつらなる海嶺では、地下から上昇してきたマグマが冷えて新しい地殻が形成され、山脈の左右に広がってゆく。そして重要な点は、形成された地殻から、地球の磁場の歴史を読み取れるということだ。

 地球の磁場は、時折逆転することがある。逆転が起こると海嶺でできる地殻が帯びる磁気にも変化が現れて、逆転を繰り返すたびにその記録が海嶺の両側にバーコードのような縞模様となって残る。海嶺でこれまでずっと安定して新しい地殻が形成されてきたとすれば、バーコード模様が安定的に形成される。対して、マントルプルームによって不規則に生まれる海底火山では、このようなきれいな模様はできない。(参考記事:「北磁極の動きが加速、原因不明、あまりに急激」

次ページ:「別の惑星の火山を調べる方が楽」

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