恐竜の腹の中で終わりを迎えた新種のトカゲが見つかった。
ヒンドゥー教の神インドラにちなんでインドラサウルス・ワンギ(Indrasaurus wangi)と名付けられたこの不幸な爬虫類は、ミクロラプトルという恐竜の腹の中から発見された。ミクロラプトルは、光沢を放つ羽毛に覆われ、4つの翼をもつことで知られる。今回の化石は、中国東北部にある1億3000万年前の白亜紀の化石の宝庫「熱河生物群」で発掘された。(参考記事:「玉虫色の輝き、ミクロラプトルの羽毛」)
7月11日付けで学術誌「Current Biology」に発表された今回の発見は、ミクロラプトルの胃の内容物が残っている化石としては4例目だが、トカゲを食べていたことを示す証拠としては初めてだ。これまでの化石から、小型哺乳類や魚、鳥を食べていたことはわかっていた。さらに今回明らかになったのは、ミクロラプトルが現代の肉食の鳥と同様、トカゲを頭から丸のみにしていたことだった。
ミクロラプトルは「本当に、口に入るものは何でも食べる雑食性だったようです」とカナダ、アルバータ大学の博士研究員スコット・パーソンズ氏は話す。なお同氏は、今回の研究には関わっていない。
今回、ミクロラプトルの化石とその最後の食事が特定されたことは、すでに熱河生物群の食物網の解明に役立っている。論文の著者である中国科学院古脊椎動物・古人類研究所(IVPP)の古生物学者ジンマイ・オコナー氏の研究チームは、インドラサウルスについて書くにあたって、この太古の世界で何が何を食べていたかの関係を、これまでで最も詳細に調査した。(参考記事:「「昆虫を食べたトカゲを食べたヘビ」の化石発見」)
当時の食物網の底辺を形成していたのは少なくとも6種類の植物で、それを草食動物がエネルギーに変えていた。トカゲや恐竜はどちらも湖の生態系に暮らす豊富な魚を食べ、小型哺乳類は捕食者にも被食者にもなった。頂点に君臨する捕食者は、体長2.5メートルの肉食恐竜シノカリオプテリクスだったと考えられる。一方、ミクロラプトルは食物網の中間に位置し、食べられるものは何でも食べた。
「熱河生物群は、どの恐竜がどんな食物を食べていたのかがわかる最高の記録です」とパーソンズ氏は話す。
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