1965年、雑誌「アウトドア・ライフ」にケニア人ハンターがライオンに襲われたという記事が掲載され、このライオンは「ダラジャニの人食い」として一躍有名になった。1965年は深刻な干ばつのせいで獲物が減っており、ライオンが人間を襲う事件がケニア南部で複数発生していた。
ただし、ダラジャニの人食いにはある特徴があった。ヤマアラシの針が鼻に刺さっていたのだ。
このたび、ライオンとヤマアラシとの関係について初めて本格的な調査が行われ、ライオンが受ける被害とその意外な影響が明らかになった。論文は学術誌「Journal of East African Natural History」5月号に掲載された。(参考記事:「動物大図鑑:ヤマアラシ」)
米シカゴにあるルーズベルト大学の研究者で研究チームを率いたジュリアン・カービス・ピーターハンス氏は、ダラジャニの人食いの死骸を詳しく調査し、ヤマアラシの針が鼻の中に15センチ以上突き刺さり、脳のすぐ近くまで達していたことを発見した。
このライオンが人を襲った原因が、ヤマアラシの針にあることはほぼ間違いないと、カービス・ピーターハンス氏は言う。鼻に針が刺さったライオンはうまく狩りができず、徐々に衰弱して、追い詰められた末に人間を狙うようになったのだろうと、氏は推測する。(参考記事:「ライオン 生と死の平原」)
論文によれば、ライオンは通常、ヤマアラシを避けており、獲物が不足しない限りは手を出さない。ヤマアラシを狩ろうとすれば、ライオンは重大なけがや、最悪の場合は死の危険にさらされる。そしてけがをしたライオンは、人間、ウシ、ウマなどを襲うようになるという。(参考記事:「動物大図鑑:アフリカライオン」)
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