森の再生で過去100年分のCO2を帳消しにできる

既存の都市や農業に影響なく、CO2の排出削減は必要、最新研究

2019.07.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 つまり、化石燃料を使用する新たなインフラの建設は許容できない。それどころか、7月1日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文によれば、既存の発電所の一部を早急に閉鎖する必要があるという。(参考記事:「発電所、CO2目標を達成するにはすでに多すぎ、研究」

 その論文では、森林再生を通じてCO2を大幅に除去できれば、代替手段がまだない航空業界などから排出される温室効果ガスを相殺し、おそらく気温上昇の抑制にもつながるだろう、と述べられていた。

「木を植えることは誰にでもできます」

 樹木に限らず、あらゆる植物は、光合成のために大気中のCO2と水を吸収する。それでエネルギーを得て、成長する過程で、酸素を大気中に放出する。木はCO2を吸収するほか、土壌が相当量の炭素を取り込むのを促進する。

 今回の研究では、さまざまな生態系における森林保護区の高解像度衛星写真を8万枚近く調べ、それぞれの自然な樹木被覆レベルを突き止めた。それをグーグルアース・エンジンを使ったマッピング・ソフトウェアと組み合わせて予測モデルを作成し、世界中の潜在的な樹木被覆率を明らかにした。

 その結果、国土の半分以上で森林を再生できるかもしれない国は、わずか6カ国しかないことが判明した。ロシア(1億5100万ヘクタール)、米国(1億300万ヘクタール)、カナダ(7800万ヘクタール)、オーストラリア(5800万ヘクタール)、ブラジル(5000万ヘクタール)、中国(4000万ヘクタール)である。これらの国々では森林の多くがすでに伐採されてしまっているため、逆にとても大きな可能性を秘めている、と論文の筆頭著者であるスイス、チューリッヒ工科大学のジャン=フランソワ・バスティン氏は言う。

「木を植えることは誰にでもできます。明日からでも始められます。森林を再生させれば、炭素の排出を削減するための時間が稼げるのです」と同氏は話す。

 とはいえ、植林により炭素を貯蔵できても、花粉媒介者などの多くの野生生物を支えられるわけではない。花粉媒介者の減少がとても心配だ、とバスティン氏は言う。

「今回の研究は、気候と私たちの命を維持するシステムを守るためには、森林を人類の最良の味方として尊重する必要があるということを示している、と個人的には思います」と同氏は話す。

次ページ:アフリカの森の可能性

おすすめ関連書籍

気候変動 瀬戸際の地球

変化していく地形、水浸しの生活を強いられる人々、生息域を追われる動物たち、そして経済的ダメージまで、人類史上最大の危機を徹底レポート。気候変動によって変わりつつある世界の今に迫る1冊。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加