高さ3メートル余り、体重6トンを超すアフリカゾウ「マット」は、地球上で最大級の動物だ。厚い皮膚を持つこのオスは、52歳という年齢にもかかわらず、今も驚くほどのエネルギーを交尾に費やしている。
6月24日付けで学術誌「Journal of Animal Ecology」に発表された新たな研究によれば、むしろマットのような高齢のオスは、メスを探し出して交尾することに若いオスよりずっと多くの労力をつぎ込んでいることがわかった。
マットは、ケニアのサンブル国立保護区とバッファロー・スプリングス国立保護区にかけて分布する個体群の一員であり、1年のうち約3カ月間、生殖行動に駆り立てられる。生物学者が「マスト」と呼ぶ状態だ。マストの間、中年から高齢のオスのゾウは食事や休息にほとんど時間を割かず、可能な限り多くのメスと交尾しようと、サバンナを歩き回る。メスは母系集団で生活しており、オスはマスト期に入るまで別のグループで暮らすことが多い。(参考記事:「動物大図鑑 アフリカゾウ」)
「マスト期のオスは、テストステロン(いわゆる男性ホルモン)工場のようです」。今回の論文の共著者で、英オックスフォード大学博士課程修了後の研究者、ルーシー・テイラー氏はこう話す。マスト期のオスは、においの強い尿を絶えずしたたらせ、頬の特殊な腺がふくらみ、フェロモンを含んだ濃い液体をそこから分泌させる。
これが効果を発揮する。「マスト期のオスは、そうでないオスよりもはるかに有利です」と話すのは、シンシア・モス氏だ。ゾウの保護団体「アンボセリ・トラスト・フォー・エレファンツ」の設立者で、代表を務めている。
マスト期のオスは、メスにはとても魅力的に感じられる。2007年のある研究によれば、1つの個体群にいる子ゾウの80%近くが、マスト期のオスと交尾して生まれた子だったという。(参考記事:「【動画】最悪! 子ゾウに若いオスが乱暴、その理由は」)
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