発電所、CO2目標を達成するにはすでに多すぎ、研究

既存施設の今後の排出量を試算、控えめに見ても超過

2019.07.04
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 石炭やガスを燃やす発電所を数百カ所、ひょっとしたら数千カ所閉鎖しなければならないが、それ以外にも選択肢はある。広大な森林を回復させる、二酸化炭素を大量に回収できる高価な装置を導入する、再生可能エネルギーの開発をいっそう早める、といった方法も考えられる。おそらくは、これらすべてを組み合わせなければならないだろう。

 先週、ヨーロッパは記録的な熱波に見舞われた。その際のインタビューで、気候政策や世界のサステナビリティ戦略支援に取り組むドイツの「NewClimate Institute」に所属するニクラス・ヘーネ氏は、「総力を挙げた対策が必要です。石炭火力発電所を増やさないことに加え、大がかりで大胆な対応も求められています」と答えている。(参考記事:「仏で史上最高45℃、欧州が暑くなっている」

「世界の気温が1℃上昇しただけなのに、今日、ドイツでは40℃近い気温になっています。これまで経験したことがない温度です」

 ヘーネ氏によると、米国、欧州諸国、中国、インドなどのパリ協定参加国が掲げた目標では、必要な排出量削減にはほど遠い。6月27日までドイツのボンで行われていた国連の気候変動に関する会合では、削減量引き上げで合意には至らなかった。世界は3℃以上の温暖化に向かって突き進んでいる、とヘーネ氏は言う。

世界経済が揺らぐリスクも

 ドイツのベルリンに本拠を置き、気象科学や気候政策に取り組む非営利団体「Climate Analytics」の気象科学者であるビル・ヘーア氏によると、今回の論文は、各国の中央銀行などの金融機関が最近表明した懸念を裏付けるものでもある。この懸念とは、化石燃料を燃やすインフラ設備への投資が続けば、世界経済の安定性が揺るぎかねないというものだ。化石燃料を大量に利用する設備には数兆億ドルが投資されている。しかし、二酸化炭素を排出する発電所、精錬所などの産業設備は、排出量を削減するために、閉鎖または高価な炭素回収技術の導入を義務付けられる可能性がある。そうなると、設備の資産価値が低下してしまう。(参考記事:「北極圏の温暖化による経済損失、最大7500兆円」

 論文によれば、発電所と鉱工業は二酸化炭素排出量の75%を占めているが、化石燃料を燃やすインフラの資産価値で見れば、わずか20%に過ぎない。論文は、こういった設備を予定より早く閉鎖するのが、経済的にもっとも効率のよい解決策だと結論づける。

 デイビス氏は次のように述べている。「パリ協定の目標を実現するために何が必要なのか。今回の研究で、それが明確になることを期待しています。鍵を握るのは、新しい化石燃料インフラに関する日々の決断なのです」

文=STEPHEN LEAHY/訳=鈴木和博

おすすめ関連書籍

気候変動 瀬戸際の地球

変化していく地形、水浸しの生活を強いられる人々、生息域を追われる動物たち、そして経済的ダメージまで、人類史上最大の危機を徹底レポート。気候変動によって変わりつつある世界の今に迫る1冊。

定価:1,540円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加