発電所、CO2目標を達成するにはすでに多すぎ、研究

既存施設の今後の排出量を試算、控えめに見ても超過

2019.07.04
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 すでに大気中に排出された二酸化炭素の量を国別に見れば、一番多いのは米国だ。しかし、今後の排出量では中国が圧倒的に多くなり、全体の41%ほどを占める。米国とインドがそれぞれ9%、EUが7%と続く。中国の経済は近年になって急速に発展しているため、これから長期にわたって稼働する新しい発電所や工場が多いことが原因だ。研究によると、中国の石炭火力発電所は稼働からまだ平均で11年しか経っていないが、米国の石炭火力発電所は40年に近い。

 デイビス氏らの研究は、二酸化炭素の発生源をすべて網羅していない。つまり、この排出量の予測は控え目に見積もったものであるということだ。

 たとえば、農業や、森林伐採などの土地利用の変化に伴う排出量は含まれていない。現在、これらによる排出は合計排出量の24%を占める。さらに、化石燃料を地中から掘り出す際に大量に排出される二酸化炭素も含まれていない。カナダのオイルサンドから石油を採掘するには、同国が産出する天然ガスの3分の1近くを燃やす必要がある。

前を見ずに運転するようなもの

 国連や各国は主に年間の二酸化炭素排出量に注目して気候変動に対応しようとしているが、それだけでは十分ではないようだ。デイビス氏はそれについて、「高速道路で横を向いて車を走らせているようなものです」と言う。化石燃料を燃やす施設を作るかどうかという現在の決断次第で、今後の二酸化炭素排出量は決まってしまう。パリ協定の目標達成に望みを残せるかどうかは、現在の決断にかかっているということだ。(参考記事:「【解説】COP21「パリ協定」勝ち組になったのは?」

 この研究では、現在建設中または計画中となっている石炭やガス、石油を燃やす発電所からの排出量も試算している。これらが計画通り稼働すれば、世界の二酸化炭素排出量は8460億トンにまで跳ね上がる。しかも、これは発電所だけの数字だ。化石燃料を使用する車両、建物、工場など、今年以降に完成する新しいインフラが排出する二酸化炭素の量は見積もられていない。

 気温上昇を1.5℃どころか、2℃未満に抑えることすら厳しいのは当然だと、ノルウェーの国際気候環境研究センターで研究責任者を務めるグレン・ピーターズ氏は指摘する。同氏は電子メールで「再生可能エネルギーは急成長していますが、年々拡大し続けるエネルギー需要に対応できるほどではありません」と述べた。(参考記事:「日本はどう?再生可能エネルギー普及、世界で加速」

「それでも、気温上昇を1.5℃か2℃以内にとどめるには、化石燃料を燃やすインフラを予定より早く閉鎖する以外にないことは、ほぼ間違いありません」

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