約200万年前のヨーロッパでは、巨大ハイエナやサーベルタイガー、ラクダなどが闊歩していた。時に太古の人類と遭遇することもあっただろう。今回、その中に高さが3.7メートルもある巨大な鳥が加わった。古生物学者にとっても驚きの発見だ。(参考記事:「解説:新種の人類、ルソン原人を発見、フィリピン」)
6月26日付けで学術誌「Journal of Vertebrate Paleontology」に発表された論文は、北半球に生息していた巨大な飛べない鳥についての初の報告例だという。この絶滅した鳥は、Pachystruthio dmanisensisと名付けられた。体重はなんと450キロもあり、現在生息している最大の鳥、ダチョウのほぼ3倍になる。(参考記事:「巨大な古代鳥類:頭蓋骨」)
「これまで、太古の巨鳥と言えば、マダガスカルやニュージーランド、オーストラリアのものと考えられてきました。しかし、今回の発見は、かつてのヨーロッパにも巨大な鳥が生息していた証拠です」と、米スミソニアン国立自然史博物館の鳥類の学芸員ヘレン・ジェームズ氏は話す。なお同氏は、今回の研究には関わっていない。
また、英ロンドンの動物学研究所の古生物学者で、マダガスカルの絶滅した巨大な鳥エピオルニスの専門家でもあるジェームズ・ハンスフォード氏は、絶滅した巨鳥の化石は世界的にも非常に珍しいと付け加える。(参考記事:「エピオルニスの巨大な卵を探して」)
地形や近くの遺跡などの手がかりから、この飛べない鳥Pachystruthioは、初期人類ホモ・エレクトスにとってご馳走だった可能性がある。なにしろニュージーランドでは、やってきた人類が巨大な飛べない鳥モアの味を覚え、絶滅に追いやったのだから。(参考記事:「現代的生活の起源はホモ・エレクトスか」)
「古代動物の骨の宝庫」で発見
今回新たに記載された鳥の化石は、黒海の北岸、クリミア半島にあるタヴリダ洞窟で、2018年の夏に発掘された。タヴリダ洞窟は古代動物の骨の宝庫と呼ばれており、この鳥の大腿骨は洞窟の「ハイエナの巣」と呼ばれる場所で見つかった。ここから巨大なハイエナの骨が大量に見つかったことが、名前の由来だ。 (参考記事:「失われた楽園 クリミア」)
ジェームズ氏によれば、鳥の骨が1本だけ見つかるのは珍しいという。もし動物がその場所で死んだのであれば、骨格全体が見つかるはずだからだ。捕食者が骨を洞窟の中に引きずってきたのかもしれないが、実際に何が起きたのかを知るのは難しい。