ユビナガサラマンダー(Ambystoma macrodactylum)の成体。米オレゴン州デシューツ郡で撮影。幼生期、生息する池の餌が不足すると、頭と鋤骨歯が大きく発達する。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 米オレゴン州中部、カスケード山脈。スリーシスターズ連峰の高地にある静かな水たまりに行くには、山を歩き、スキーで移動しなければならなかった。水中には、他に大したものはなかったが、奇妙な見かけのサラマンダーがいた。

「そのサラマンダーの幼生が、とても痩せた体と大きな頭をしているのに気づきました」と米国地質調査所の生物学者スーザン・ウォールズ氏は振り返る。そこには両生類のユビナガサラマンダー(Ambystoma macrodactylum)の幼生がいたのだが、よく見ると、どの個体も頭と顎が通常よりはるかに大きかった。のちに、その大きな口は、非常に特殊な目的に役立つことが判明した。共食いである。

 この大きな顎には、牙のように大きく成長した鋤骨歯(じょこつし)が生えていた、と同氏は初期の論文に書いている。通常、ユビナガサラマンダーの鋤骨歯は、前歯列の後ろにある小さな突起にすぎない。大きな鋤骨歯は、共食いをするのには都合がいいのだろう。だが、そもそもなぜ共食いをするのだろうか?(参考記事:「定説覆すコブラの共食い、しかもオス同士のみ」

 陸に上がる前の幼生期、ユビナガサラマンダーは「変形」することがある。頭と顎が体の割に大きくなり、鋤骨歯はより目立つようになる。もし十分な食料と水がある場合、こうした変形は起きない。だが、何日も餌が不足したり、すぐに池から出る必要があったりする場合(比較的乾燥する春や夏など)には、頭や歯が大きく「変形」するし、あとで元に戻ることもある。

 口や牙が大きいほど、より大きな餌を食べられる。大きな餌には、自分の仲間や兄弟も含まれる。高タンパクの食事によって、餓死を回避し、成長を早めて、池が干上がる前に陸に上がれるようにするのだ。

次ページ:餌が少ないと共食いになる

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