宇宙時代は第二幕へ、人が宇宙へ行く意味は?

多くの国や民間企業が参入、探査や開発の動きが活発に

2019.06.30
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ボーイング社が開発した宇宙船、CST-100スターライナーに部品を取り付ける技術者。この宇宙船は帰還時に水面ではなく、陸上に降りる仕様で、減速用パラシュートと衝撃を和らげるエアバッグが装備されている。国際宇宙ステーションまで最大5人を運び、最高10回まで再利用可能。有人テスト飛行は2019年後半の予定だ。PHOTOGRAPH BY DAN WINTERS

 宇宙旅行時代の幕開けが近づいている。米国では、スペースX社とボーイング社が手がける宇宙船がいよいよNASAの認可を受けるところまで来ている。ほかにも、バージン・ギャラクティックとブルー・オリジンという民間企業2社がそれぞれ進めている宇宙船の開発も本格化している。

 宇宙開発を行うのは、米国企業やロシアの国家事業だけではない。2019年1月、中国は無人探査機を月の裏側に初めて軟着陸させた。イスラエルは、2019年4月に非営利組織スペースILが打ち上げた探査機ベレシート(ヘブライ語で「創世記」の意味)が、民間の試みでは初めて月の周回軌道に乗った。日本では2019年3月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が月面を1万キロ以上走行できる探査車をトヨタと共同で開発すると発表した。

 しかし、こんな疑問が当然浮かんでくる。そもそも人間が宇宙へ行く意味はあるのか? 人間よりも探査機のほうがずっと効率的で、迅速かつ安上がり、しかも安全に仕事ができるとなればなおさらだ。

宇宙は人類にとっての「保険」

 有人探査は人類にとって大切なのだろうか。「探検せずにいられないのは、人間本来の性質だ。これほど偉大な探検はない」。1971年、アポロ15号のデビッド・R・スコット船長は、月面から地上管制室にそう伝えた。

 一方で、かつて恐竜を絶滅させたとされる小惑星の衝突や、人間が自ら引き起こす核戦争、気候の激変といった要因で、地球に住めなくなる事態も考えられる。ここで出てくるのが、人類が生き延びるための「保険」という考え方だ。

 もちろん、これからも地球にずっと住み続けられれば、それに越したことはない。そのための対策については、これまでも多くの人が検討してきた。環境保護活動家のビル・マッキベンが言うように、地球上のどんなに過酷な場所も、地球外で到達できるほかの場所に比べればはるかに快適なのだ。

 宇宙時代の幕開けを象徴したのは、皮肉なことに月やほかの惑星ではなく地球の画像だった。特に有名なのが、月の向こうにぽっかりと浮かぶ青い地球、いわゆる「地球の出」だ。こうした写真をきっかけに環境保護運動は盛り上がりを見せ、水や大気の汚染を防ぐ新しい法律を世に送り出した。そして多くの人が、「足元の問題を解決するほうにお金を使うべきでは?」と思い始めたのだ。

「お金」とは、宇宙開発費のことだ。現在こそNASAの予算は米連邦予算の0.5%だが、かつては4.5%だったこともある。もし人類の火星行きが実現していたら、どれだけの費用がかかったことか。計画を見送ってきたことは正解だったという意見が出るのも当然だ。

 だが、再利用型ロケットなどの開発が進み、費用は大幅に下がってきた。数十年後に火星まで行くとしたら、費用は今より少なくて済むし、1980年代に比べればはるかに安上がりになるはずだ。ニール・アームストロングが人類で初めて月面に降り立つのをテレビで見たとき、ここまで時間がかかるとは想像もしていなかったが、それでもコストの低下は朗報には違いない。宇宙時代は第2ステージに入ろうとしている。

※ナショナル ジオグラフィック7月号「新たな宇宙時代へ」では、各国が宇宙開発に参入するなか、人類が月や火星に進出する意義を考えます。

文=サム・ハウ・バーホベック/ジャーナリスト

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