安全な場所に糞を運ぶため、実験環境で風の方向と太陽代わりの緑色LEDの位置を確かめるフンコロガシ。(PHOTOGRAPH BY CHRIS COLLINGRIDGE)
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 南アフリカの大地では、牛が倒れると間髪入れずライオンやハイエナがやってきて、死骸をめぐる争いを繰り広げる。ほとんどの人は気づかないだろうが、牛が糞をしたときも同じようなことが起きている。糞をめぐって争うのはフンコロガシだ。(参考記事:「動物大図鑑 スカラベ」

 フンコロガシは、触角でにおいを検知し、糞に群がってくる。そして、それぞれが糞の一部を削ぎとり、転がしながらいったんは埋め、ほかのフンコロガシに奪われる前にむさぼりつく。だが、他の仲間に奪われない安全な場所をどうやって見定めているのか、そしてどうすればまっすぐ効率よく糞を転がすことができるのかについては、今も盛んに研究されている最中だ。(参考記事:「フンコロガシはなぜ空を見ながら糞を転がすのか」

 2003年、マリー・ダッケという科学者が、夜行性のフンコロガシ(Scarabaeus zambesianusなど)は月の偏光をたよりに方向を判断していることを突き止めた。10年後、ダッケ氏は、別のフンコロガシ(Scarabaeus satyrus)が月のない夜に天の川の光を使うことを発見した。さらに1年後には、昼行性のフンコロガシ(Scarabaeus lamarckiなど)が太陽を目印にしていることも明らかにした。(参考記事:「恒例、イグ・ノーベル賞が発表」

 そして今回、ダッケ氏は、フンコロガシがもう一つ別の感覚を駆使していることを突き止めた。

 6月24日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された論文によると、太陽が天頂にあって方向の判別に使えない場合、フンコロガシは太陽ではなく風をたよりに方向を見定めるという。

 つまり、フンコロガシは太陽と風という2種類の信号を感知し、状況に応じて使い分けている可能性がある。(参考記事:「天の川を見て方位を知るフンコロガシ、日中は?」

「とても柔軟なシステムだと思います」とダッケ氏は話す。「フンコロガシの脳はゴマ粒ほどの大きさであることを考えれば、すばらしいことではないでしょうか」(参考記事:「延長戦で決着 糞をめぐるフンコロガシのバトル」

【参考動画】「臭い賞品」を勝ち取るのはどちら? (解説は英語です)
フンコロガシにとって、糞は食料にもなり、幼虫を育てる小部屋にもなる貴重な資源だ。

次ページ:太陽というコンパスが使えなかったら?

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