ロシア当局の作業員がクレーンを使い、いけすからシャチを吊り上げる。ロシア極東スレドニャヤ湾には2018年の夏から97頭のシロイルカとシャチが閉じ込められていた。(PHOTOGRAPH BY YURI SMITYUK, TASS, GETTY IMAGES)
[画像をタップでギャラリー表示]

 ロシア極東のスレドニャヤ湾に作られたいけすに100頭近くのシャチとシロイルカが閉じ込められていた、いわゆる「イルカ監獄」問題で、2019年6月、動物たちの解放に向けた動きが始まった。これら鯨類は、2018年夏に海洋哺乳類を水族館に供給するロシアの企業4社が捕獲していたものだ。(参考記事:「【動画】「イルカ監獄」97頭を解放へ、知事が署名」

 ロシアのゴルデエフ副首相は6月20日、ロシア政府がこの動物たちを野生に返す手続きを開始したと述べた。この発表は、プーチン大統領が国民と直接対話する毎年恒例のテレビ番組の中で行われた。

 全ロシア漁業海洋学研究所(VNIRO)は最初の8頭の移送を開始。6頭のシロイルカと2頭のシャチがクレーンで吊り上げられ、輸送トラックに乗せられた。8頭は、もともと捕獲された場所である、約1800キロメートル離れたオホーツク海で解放されることになっている。トラックと船による移動には5日ほどかかる見込みだと、米国のNGO「Whale Sanctuary Project」のエグゼクティブディレクター、チャールズ・ヴィニック氏は説明する。ヴィニック氏は、今回の輸送作業と解放を監督するVNIRO副所長ヴャチェスラフ・ビジコフ氏と連絡を取り合っている。

 ロイター通信によると、ゴルデエフ副首相は、シロイルカやシャチは小さなグループに分けて解放される予定であり、全頭の移動には4カ月かかるだろうと述べた。米ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたVNIROの声明によると、輸送中のシロイルカやシャチは、獣医や科学者を含む70人の専門家がチェック。1頭につき2人が付き添い、解放前に追跡用のGPS発信器が取り付けられるという。

「科学者の助言に従い、この動物たちにとって住み慣れた環境である、もともと捕獲された自然生息地に返すという、唯一の理にかなった判断をしました」とゴルデエフ副首相は述べている。(参考記事:「【動画】川で迷子のシロイルカ、飛行機で海へ」

【動画】「イルカ監獄」に捕獲されたシロイルカとシャチ。2019年1月に撮影された。

 今回解放されるシャチとシロイルカが国際的な注目を集めたのは、2018年末から2019年初頭にかけて。きっかけはドローンで空撮された施設の様子が報じられたことだった。98頭のシャチとシロイルカが、海に作られた小さないけすの中でひしめき合う様子から、メディアはこの施設を「イルカ監獄」と呼んだ。この報道により、捕獲そのものとイルカたちの扱われ方の両方に世界の怒りが向けられた。

 当時、シロイルカとシャチの所有権を主張していた4つの会社のうち3社は、動物は合法的に捕獲したものだと主張し、残りの1社はコメントの求めに応じなかった。解放の手続きが開始されて以来、4社はいずれも公式声明を出していない。

次ページ:プーチン大統領も見守る

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    記事が全て読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

unknown(未知の海)

20年以上、世界各地の海の写真を発表してきた水中写真家、鍵井靖章が今回選んだテーマは、見たことのない「未知の海」。232ページ、写真193点の大ボリュームで魅せる水中の絶景を、五つの切り口で存分に味わえます。

定価:本体3,200円+税